「いくらシステムが立派でも、それは情報伝達の道具に過ぎません。使う人がその目的を理解して取り組まない限り、機能しない。プロ野球選手を目指す人で、長嶋(茂雄)がホームランを打ったバットを研究するアホがおりますか。そんなまねをしちゃいけませんよ」って。ただ、いくらそう説明しても理解してくれる人は少なく、質問内容は、本質から離れたシステムのことばかりでした。

2年間、説得した

 うちのシステムが絵に描いた餅にならなかったのは「何としても良質な靴下を作る」という同じ志を持ったサムライたち、つまり工場の協力があったからです。

 このサムライチェーンの構築に際し、協力工場には端末機とソフトを入れてもらいました。新品の編み機が10台くらい買える金額が掛かります。しかし、売れた分だけ、即座に作る仕組みを構築するには、どうしてもそれだけの投資が必要でした。

 工場は生産設備にはお金をかけますが、付帯するものにはかけたがらん。「そんなものに投資するより、今まで通り注文をもらったほうが得や」と大反対されました。

 靴下を販売してくれるフランチャイズ(FC)加盟店も同様です。高価なPOS(販売時点情報管理)レジを新たに導入する必要がありましたし、何より経営状態が丸見えになることを嫌がられました。

 それでも僕は諦めませんでした。同志的結合なしにFCは完成しない。今までのような品切れをなくせば、その程度の経費は十分に浮く。何よりもグループの売り上げを最大化できると、何度も説明会を開いたものです。

 今これを導入しなければ今後我々は生きていけないと訴え、お願いし続けました。根気よく説得し、ようやく2年がたった頃に「そこまで言うなら」と折れてくれる人がぽつぽつと出てきた。

奈良県広陵町にある物流センター、「タビオ奈良」。ここから靴下専門店「靴下屋」など全国の各店舗へ商品を毎日配送する(写真:大亀京助)

 なぜ協力してくれたのか。それは、信頼関係の土台があったからやと思います。

 商売で大事なのは、自分より相手の利益を優先することです。
 僕は創業以来、仕入れで値切ったことは一度もない。経営が大変な時期もあったけれど、値切ることは絶対にしなかったし、支払い期日も守り通しました。

 品質にこだわった商品を作っていくには、工場と信頼関係を築くことが最も大切だからです。おかげで創業して5、6年ほどたった頃から「ダンは技術力があれば、それだけ評価してくれるし、コスト面でも工場を大切にしてくれるらしい」という評判が広がり、技術力があって取引をしたいという工場が増えていったのです。

 僕が生産・販売管理システムを構築できたのは、ひとえに「三者鼎立(さんしゃていりつ)」の商売を追求し続けてきたからだと思います。三者鼎立とは、メーカーだけではなく、卸や小売り、協力工場それぞれがどこも損をしない、全者がプラスとなる商売を常にするということ。お客様に喜んでいただける商売をするのが本当の商人だという考え方です。