ブランド戦略のコンサルタント・村尾隆介氏は、独自のブランディング手法を用いることで、中小企業の採用を強化している。合同企業説明会などでは、プレゼンテーションの善し悪しで学生のエントリー数が大きく変わる。今回、村尾氏の採用強化プログラムを実施し、自ら仕立てたプレゼンを同氏の前で披露した技術商社のサカエ(静岡県浜松市)の奮闘ぶりをルポする。
サカエは、ベアリングや自動化装置など工場設備機器をメーカーに提案し、販売、メンテナンスする技術商社だ。従業員数は約70人。毎年4月1日には、社員全員が仮装して新入社員を歓迎したり、給与は社長から現金で手渡されるなど、ユニークな制度のある会社でもある。ところが同社も多くの中小企業と同様、人材不足に悩んでいる。
サカエの今期の採用目標は、営業職3人、事務職1人の計4人。同社では、この数字を達成するために、各部署の若手社員を中心とした5人のリクルートチームが結成された。チームは一丸となって、プレゼン練習に取り組んできた。
リーダーを務める総務部の大石達也さんは、「これまで若手社員が採用に関わることはなかった。日々の仕事に追われると、他の部署の仕事まで見えないことが多い。お互いのプレゼンを見てアドバイスをし合うことで、今まで知らなかった、他の部署のことを知ることができた。それが、チームメンバーの成長につながったと実感している。どんどん世代交代しながら、リクルートチームの活動を続けていけば、部署間のつながりが深まるのではないか」と語った。
「こんな人が欲しい」それぞれの仕事の魅力をアピール
まず難しかったのが、プレゼン資料の作成だという。
「学生たちに楽しんでもらえるよう、写真を選んだり、新たに撮影したりもした。プレゼンの1人当たりの持ち時間は5分程度だが、作った資料を元に話してみたら、30分もかかってしまった。学生にとって何が興味のあるポイントなのか、何を削り何を残したらよいかを考えるのが難しかった」(大石さん)
そんなリクルートチームの練習の成果を見るために、都内某所の会議室に30人ほどの関係者が集まった。本番さながらのプレゼンと質疑応答を実施した後、村尾氏らから具体的なアドバイスを受ける。
村尾氏は「今年、学生から多い質問は『御社は働き方改革に着手されていますか?』というもの。おどおどせずに、答えられますか? プレゼンは練習できても、質疑応答は練習できない。今日のこの場を本番のつもりで臨んでいただき、みんなからのアドバイスを生かしていただきたい」とリクルートチームにエールを送った。

小さな会社のブランド戦略を手掛けるコンサルタント。スターブランド社の共同経営者・フロントマン。14歳で単身渡米し、ネバダ州立大学教養学部政治学科を卒業後、本田技研工業に入社。退社後、食品の輸入販売ビジネスで起業。事業売却を経て現職。その成功ノウハウを、小さな会社やお店に提供している。日本に中小企業のブランディングブームを起こした第一人者。『今より高く売る!小さな会社のブランドづくり』(日経BP社)など著書多数。中小企業経営研究所・客員研究員として、すごサイ(すごい採用プロジェクト)を監修する。(写真:清水盟貴)
プレゼンのトップバッターを務めたのは、総務部の大石さん。
会社の組織図の説明をした後、「遊びも仕事も本気の会社だ」と語った。例えば、仮装で行う入社式や創業記念パーティ、海外への研修旅行、内定者の自宅を社長が家庭訪問するなど、ユニークな制度を説明。さらに、メンタルヘルスケアにも取り組んでおり、年に1回、外部の機関でカウンセリングを受けられることを伝えた。
そして、「モノづくりが好きな人」「困っている人を放っておけない人」など、欲しい人材の10カ条を挙げ、「1つでも当てはまれば、サカエに向いているかもしれません」と締めくくった。発表時間は6分14秒だった。
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