小野さんは、リクルートチームが介護業界の改革について議論しているように、採用力アッププログラムの実践により、リクルートチーム一人ひとりのモチベーション向上にもつながっていることを紹介してくれた。

 リクルートチームに選ばれた職員は現場の仕事を抜けて採用活動に参加している。このため、昨年までは「面倒」と感じる職員もいたそうだ。だが今年のチームは「大切な役割なのに、面倒というのは違うんじゃないか」「嫌々することじゃない」「ちゃんとやろう」と、高い意識で採用活動に挑んでいるとのこと。

 一方で彼らのモチベーションに、小野さん、井上さんも後押しされている。これまでは採用活動のために現場を抜ける職員がいることを良く思わない職員たちもいたそうだ。「忙しいのに、なぜ同じ職員ばかり、それも若手が抜けるのか」という不満が相次いだ。

 そこで井上さんは各施設長に「なぜリクルートチームが入社1~5年目の職員なのか」をはっきり説明したという。「昨年まではきちんと話ができていなかった。でもリクルートチームの活動意義について村尾さんからお墨付きをもらったので、はっきり説明できた」(井上さん)

 合同就職説明会ではハキハキとした口調と笑顔で隆生福祉会の魅力を学生たちに伝える井上さんだが、実は同法人に入職したのは1年前。それまでは全くの異業種で働いており、福祉業界は全くの未経験だったというから驚きだ。だが異業種からの転職だからこそ、「福祉業界のここはおかしい。もっと変えていきたいという思いは強かった」と言う。

 井上さんは今、村尾氏はじめ、そこで出会った多くの人から意見を聞いて「自分の考えは間違っていなかった」と確信している。一方で「このやり方は見直そう」と考えを改めたこともあり、「1つの指標が持てた」と井上さんは振り返る。井上さん個人にとっても、村尾氏の採用力アッププログラムに出合ったことは、仕事を進める上で重要な指針になっているようだ。

セミナーの参加人数は大幅アップだが課題も

 13時から始まった合同就職説明会は17時に終了。この日、隆生福祉会のブースに来て話を聞いた学生は最終的に25人。昨年は、数人にしか自分たちをアピールできなかったとのことで、それと比べれば大きな前進だ。

 とはいえ課題も残った。今回の合同就職説明会ではプレゼンを1対1から1対6のセミナー形式に変えたことで、ブースに来てもらいやすくはなったが、「1対1のときよりも、一人ひとりの反応が分かりにくかった」と井上さん。

 1対1であればじっくり話ができて、連絡先を交換して相手を確実に施設見学に誘うことができた。1対6だと取りこぼしもままあるという。一通りの説明が終わった後、質問してきた1人と話していると、ほかの5人が帰ってしまい、連絡先交換ができなかったこともあった。

学生の反応を確かめる小野さん。セミナー形式のプレゼンでは、一人ひとりの学生に話し掛けるタイミングを取ることも重要だ
学生の反応を確かめる小野さん。セミナー形式のプレゼンでは、一人ひとりの学生に話し掛けるタイミングを取ることも重要だ

 対策としては、次の就活イベントの出展日や施設見学、カフェ座談会を知らせるPOPをブースに設置する、ポスターをA4判のチラシにして、通路を歩く学生に配るといった方法が考えられそうだ。

 チラシの裏面にも、次の就活イベント出展のお知らせなどの情報を盛り込む。これなら、ブースに座って話を聞かない学生にも情報を発信できる。

 このように、採用活動中に出てきた課題を一つひとつ克服していくことも採用強化につながる。今後も今回取り組んだ採用活動を指標として、採用強化はもちろん、自分たちも変わり、福祉業界も変えていきたいと2人は力強く話してくれた。

(次回は、浜松の機械部品専門商社、サカエが挑んだ、プレゼンの発表会とその指導を掲載予定です。構成:羽野羊子、編集:日経BP総研 中堅・中小企業ラボ)

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