合同就職説明会会場のブース前に立て掛けるポスターも、プレゼン指導の場で得た意見を基に作成。「採用力アッププログラムを実施していく中で、『変える』というキーワードを見つけることができた。なので、それをポスターのキャッチにもした」と小野さん。「変える」をメインコピーにしたことで、自分たち自身が「実際に福祉業界を変えていきたい」という明確な目標もできたという。

 学生向けのキャッチコピーは「欲しいのは、福祉と世界を変える仲間」。以前は、欲しい人材は「笑顔ができる人」「優しい人」という、福祉業界ではありがちな漠然とした表現だった。だが今回は「変える」をキーワードに、それを実現する仲間が欲しいという隆生福祉会の「意思」が前面に出て、存在感がぐっと増した。

 同法人で働くメリットについては「フィンランドとの相互交換研修がある」「最新の介護ロボットを導入」などと、より具体的に打ち出した。

 結果、「昨年の合同就職説明会より、断然感触は良い」と小野さん。まだイベントの途中だったが、ブースで話を聞いてくれる人は昨年より数倍多いと熱気を伝えてくれた。1対1での説明からセミナー形式に変えたのも人数増の理由だが、ブースの作り方に凝った効果もあると小野さんは分析する。「欲しい人材や一緒に働くメリットを言語化、プレゼンやブースに生かせたことが大きいと思う」。

就職イベントで、隆生福祉会の特徴と仕事の内容についてプレゼンする井上さん。福祉業界を「変える」をキーワードに、学生たちを引き付けた
就職イベントで、隆生福祉会の特徴と仕事の内容についてプレゼンする井上さん。福祉業界を「変える」をキーワードに、学生たちを引き付けた

 隆生福祉会は一連の採用活動の流れも変えた。昨年までは、就活イベントで出会った学生と連絡先を交換。サンクスメールを送付した後、施設見学に誘うという流れだった。この間にもう1つ、今年は「カフェ座談会」と呼ぶ説明会を追加している。

 カフェ座談会は、就活イベントや施設見学では、学生の緊張がほぐれず、聞きたいことが聞けないことも多いのでは……と考えた新たな手法。就活イベントで出会った学生をカフェ座談会に誘い、お茶を飲みながらざっくばらんに会話することで、距離を縮めることを狙った。カフェでの飲食代は会社持ち(1人1000円まで)だ。

 カフェ座談会は月2回程度、梅田や天王寺などにあるカフェで開催する。この日も、ブースに来た学生と連絡先を交換した後、カフェ座談会に誘っていた。

リクルートチームは入社後1~5年目の社員たち

 このカフェ座談会で学生に対応するのは、前述のリクルートチームで、入職後1~5年目の職員たち。学生たちと年が近い職員のほうが、学生たちが「自分の入職後の姿をイメージしやすい」。隆生福祉会は、こうしたチーム編成でも村尾氏の持論を活用した。

 同法人のリクルートチームは、8人中5人を「入職後、自分もこんな風にいきいきと働きたい」と学生たちに思ってもらえるような若手職員で占めている。

 彼らはカフェで学生たちに自分の経験を語り、学生たちの本音や質問を引き出すなど、その役割は重要だ。「リクルートチームは日頃、具体的に業界をどのように変えていくかも話し合っている。採用活動も含め、彼らの活動は自分たちが福祉業界を変えていく取り組みそのものでもある」と小野さん。

 合同就職説明会のブースに来た学生には、カフェ座談会とともに施設見学の案内もしている。今年は、既に施設見学に来た学生のうち、「入社試験を受けたい」と明言した学生もいるという。「昨年は、今の時期に施設見学に参加したのは2、3人。ただ誰一人はっきり『試験を受けたい』とは言わなかったので、それと比べれば今年はかなり良い状況」と、小野さんは確かな手応えを感じている。

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