2018年3月、医療・福祉業界の企業・団体が集まる合同就職説明会が大阪で開催された。この日は学生445人、企業・団体44が参加。同年1月に、ブランド戦略コンサルタントの村尾隆介氏が監修する採用力アッププログラムを導入し、採用力向上に努めてきた社会福祉法人の隆生福祉会もこのイベントに参加した。結果はいかに。

 隆生福祉会は、利用者・家族・地域・職員・法人の「5つの笑顔」を理念に掲げ、大阪市内で老人ホームをはじめとする事業所を16カ所展開している社会福祉法人だ。

 隆生福祉会では、人事開発部の小野聖一さんと井上愛さんのほか、6人の現場スタッフなどを加えた8人のリクルートチームを結成している。このチームの結成は、同法人が、村尾隆介氏監修の中小企業のための採用力アッププログラムを導入したのがきっかけになっている。

 この日の合同就職説明会には小野さんと井上さんが参加。小野さんいわく「今の時期(3月)、就活イベントに来るのは社会福祉士を目指す大学生がほとんど。私たちが欲しい人材も、社会福祉を学んでいるモチベーションの高い大学生。自治体から委託されている福祉関係の相談センターも運営しているので、社会福祉の資格を生かせる。私もこのセンターで働いた経験があり、その話ができるので、積極的に学生に声を掛けていきたい」。

 その言葉通り、2人は合同就職説明会会場の通路を行く学生に対して盛んに「隆生福祉会です。大阪市内の社会福祉法人です」と呼び掛けていた。ちなみに「市内」をアピールするのは、通勤のしやすさも、学生にとって就職先を選ぶ選択肢の1つだからだ。

「就活イベント」「カフェ座談会」「施設見学」が3本柱

 「欲しい人材は社会福祉を学ぶ大学生」と話す小野さんだが、昨年までは採用活動の開始が遅く、欲しい人材が一般企業に流れていたという。そこで今年は一般企業と同じく、インターンシップの時期(大学3年の夏・冬休み)から活動をスタート。

 具体的には、合同就職説明会などの「就活イベント」、独自で実施しているカジュアルな説明会「カフェ座談会」と「施設見学」の3本柱で採用を進めている。そしてこの3本柱のいずれについても、採用力アッププログラムの導入をきっかけにガラリと変えた部分が多いという。

<span class="fontBold">村尾隆介(むらお・りゅうすけ)氏</span><br /> 小さな会社のブランド戦略を手掛けるコンサルタント。スターブランド社の共同経営者・フロントマン。14歳で単身渡米し、ネバダ州立大学教養学部政治学科を卒業後、本田技研工業に入社。退社後、食品の輸入販売ビジネスで起業。事業売却を経て現職。その成功ノウハウを、小さな会社やお店に提供している。日本に中小企業のブランディングブームを起こした第一人者。『今より高く売る!小さな会社のブランドづくり』(日経BP社)など著書多数。中堅・中小企業ラボの客員研究員として「すごサイ(すごい採用プロジェクト)」を監修する。(写真/清水盟貴)
村尾隆介(むらお・りゅうすけ)氏
小さな会社のブランド戦略を手掛けるコンサルタント。スターブランド社の共同経営者・フロントマン。14歳で単身渡米し、ネバダ州立大学教養学部政治学科を卒業後、本田技研工業に入社。退社後、食品の輸入販売ビジネスで起業。事業売却を経て現職。その成功ノウハウを、小さな会社やお店に提供している。日本に中小企業のブランディングブームを起こした第一人者。『今より高く売る!小さな会社のブランドづくり』(日経BP社)など著書多数。中堅・中小企業ラボの客員研究員として「すごサイ(すごい採用プロジェクト)」を監修する。(写真/清水盟貴)

 まず就活イベントだが、それまで隆生福祉会ではプレゼンテーターと学生が1対1で膝を突き合わせて説明する方法をとっていた。だが今年から就活イベントの規模や内容によってはセミナー形式を取り入れることを考慮、今回の合同就職説明会では、セミナー形式を取り入れることにした。

 村尾氏からも「例えば、プレゼンテーター1人に対し学生は5、6人にするほうが、気軽にブースに座ってくれるのでは」という意見をもらっていたからだ。話す内容は、「夢をかなえる」「業界を変えたい」と、学生の立場に立った内容に強調することに変更した。

 今回のセミナー形式のプレゼンでは、まず小野さんが自己紹介、そして自分が隆生福祉会に入った理由を話す。質疑応答の場面では、質疑を募っても質問されないことが多いため、小野さんから声を掛けていった。

 「私たちは、採用力アッププログラムの仕上げであるプレゼン指導を村尾さんから受けているが、ここで多くの意見をもらった。それを元にプレゼンの内容や学生へのアプローチ方法を幾つも変更した」と井上さん。

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