大企業の社員なども、スタートアップのような柔軟な発想が求められるようになるのでしょうか。

鎌田:大企業の中で、それなりのポジションにいながらくすぶっていて、何かを実現したいと思っている有能な30代後半~40代の人たちが、スタートアップにCFOや副社長として流れるようになると、スタートアップがもっと成長できるようになるでしょう。

田所:先日、全自動洗濯物折りたたみ機を開発するセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(東京・港)の阪根信一社長と話したのですが、これまでに累積で100億円を超える資金調達をしているそうです。この会社には、大手家電メーカーを退職した優秀な人たちが数十人規模で入社したと言うのです。

 セブン・ドリーマーズは、世界初の全自動洗濯物折りたたみ機を開発するなど、鎌田さんが言う簡単には実現できない「バカなこと」に挑戦している。そういう姿勢と、経営が安定する100億円超という調達額が、大企業の人たちを集める受け皿になっている。

資金調達が「嫁ブロック」を解消する

鎌田:スタートアップの世界には「嫁(よめ)ブロック」という言葉があります(笑)。本人はスタートアップを起業したり、ユニコーンに転職したりしたいが、奥さんが反対することが多いという意味です。それを乗り越えてスタートアップに移るには大きな資金調達に成功して安心感を持ってもらうのが有効です。

田所:AIに判断させたら、年収が減って不安定なスタートアップに行くという選択はしないでしょう(笑)。人間だからバカなことへの挑戦にやりがいを感じるんです。

鎌田:東大の中でもスタートアップ志向が高まっています。これが新しいやりがいや豊かさに結び付く。今の学生は生まれたときから裕福なので、欲しいものがありません。スタートアップの起業を目指す若者には、フェラーリに乗りたいという人はほぼいないでしょう。物質的なことがモチベーションにならないんです。世の中をよくしたい、変えたい、達成感を味わいたいという、そういう青臭いような思いを持っている人が増えていると感じます。

田所:ビッグデータとAIに取り組んでいるメタップスの佐藤航陽(かつあき)社長が言うように「資本主義から価値主義へ」変わりつつあるのでしょう。価値主義とはそれぞれの人が持つ価値を他の人に提案し合うような社会です。資本主義の成功パターンは年収数千万円稼いで、フェラーリに乗ること。そうした既存の価値観を押しつけるのではなく、それぞれの生き方や価値観を大事にするのが価値主義の時代です。スタートアップもそうした自分なりの価値を実現する一つの方法だと思います。

(構成:吉村克己、編集:日経トップリーダー

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