ユーザーの課題を技術で解決しようという、さまざまなスタートアップが出てきそうです。これから伸びそうな分野はどこでしょうか。

鎌田:私は人間に向かうイノベーションに興味がありますね。これまでは既存の産業の効率化やネット経済に目が向いていましたが、かなり進化してAI(人工知能)が出てきたので、これらの分野は放っておいても自然に進歩します。これからは、人間の健康や寿命、ハンディキャップの克服に役立つメディカル、バイオ、ロボットなどの分野が伸びるのではないかと思います。

田所:私は、「5G」の今後に注目したい。モバイル通信の速度をさらに高める次世代通信規格の「5G」が実用化すると、これまで不可能だったことができるようになります。VR(仮想現実)のライブやテレプレゼンス(遠隔地同士で臨場感ある映像・音声をやりとりする技術)など、今まであり得なかったユーザー体験を提供できます。

 人間同士が直接会うときの情報量よりも、5Gで送る情報量が大きくなれば、移動することの意味も変わるでしょう。その変化に対して準備をしておくべきだと思います。

鎌田:高速通信によって、人の働き方も変わりますね。

田所:リモート(遠隔)での仕事もやりやすくなりますし、コミュニケーションの道具としても大きな市場が生まれます。VRやMR(複合現実、VRと現実を組み合わせること)などの研究に取り組み、技術を今から持っておくとチャンスになる。

一生の間に何度も常識が変わる時代

そうした時代に向けて、これまでの常識の枠を超えた発想をするため、頭を柔らかくするにはどうすればいいでしょうか。

鎌田:テクノロジーの進化が速くなる一方で、人間の寿命は長くなっています。一生の間に、ドラスティックに社会が変わるようになってきました。その中では、従来のように大学までの勉強だけで生き残っていくのは難しい。常に学び直すことが必要になるし、そうせざるを得ないでしょう。ただし、自分の核となるものは持っていたほうがいい。それと新しく出てきたテクノロジーを組み合わせて、次の展開を狙うのです。

田所:学生を相手に講演をしていると、昔にはなかった質問が出てくる。「AIでカバーできない仕事は何か」というのです。私は、課題の発見や現象の観察、あるいは鎌田さんのおっしゃるような可能性のありそうな分野を端から試すといったことは人間しかできないことだと思います。人の感性や問題意識は機械では代替できないでしょう。

鎌田:その質問は私も本当によく聞かれるようになりました。私が言うのは、「バカなこと」は人間しかできないということ。AIは確率の高いことを選びます。しかし、アイデアの多様性を確保するには、ほとんど成功しないと思われることへの挑戦が必要になります。他人と同じようなことをやっていても面白くないですから。

田所氏(左)と鎌田氏。AIではなく、人間しかできない発想がスタートアップには求められるという
田所氏(左)と鎌田氏。AIではなく、人間しかできない発想がスタートアップには求められるという

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