技術が新しい市場を生む

田所:資金調達の環境も変わっています。

鎌田:クラウドファンディングが一般化していることも大きい。魅力的なアイデアとプロトタイプと情熱があれば、周囲が応援してくれて、量産化の資金を調達できるという恵まれた環境が整いつつあります。

 さらに、スタートアップを後押しするもう1つの要因があります。社会的な要請です。消費者が成熟して大企業の作る量産品に飽きてきている。こうした消費者は、自分の好みに合うパーソナライズされた個性的な商品を望むようになり、ニッチな市場がいくつも生まれてきました。市場が小さいので大企業は手を出しにくい。そうしたニッチな市場にスタートアップがうまくはまって成長できるようになり、優秀な人材が流れるようになったのだと思います。

田所:まさに、そうしたニッチ市場のニーズに対するプロダクトやサービスの供給は不足していると思います。

 先日、あるスタートアップにメンタリング(対話による成長支援)を行ったのですが、ここはドローンレースの運営を手掛ける会社です。ドローンを使ったレースの日本での開催は、まだほとんどありませんが、欧米では盛んになっており、レース開催のスポンサーが多く集まるような状況があります。そのスタートアップもドローンレースの黎明期から関わって、今は年間数千万円を稼ぐようになっています。

 このように、テクノロジーが進化することで、ユーザーが実際に求めているプロダクトやサービスがあるのにその市場が存在しないというギャップがあちこちで生まれるようになっています。スタートアップは、こうしたギャップを見極めることで新たな市場を切り拓くことができるのです。

そのような市場を素早く見つけるにはどうしたらいいのでしょうか。

鎌田:それが簡単に分かったら、誰でもやっています(笑)。田所さんも著書の中で触れていますが、スタートアップは早く失敗して正解にたどり着くしかないと思います。

 最初からずばり正解というわけにはいきません。最初に思い付いたアイデアを磨いて、ある程度の水準まで持っていくのも簡単ではありません。PDCAサイクルを回しながら、なぜうまくいかないのかを分析し、正解にたどり着くことが近道でしょう。

 大企業がこうしたスタートアップ的な発想が苦手なのは、1つの案件に対して真剣に考えすぎる面があるからです。お金と時間をかけすぎるから逆にうまくいかない。最近では大企業もそれに気づいて、スタートアップ的ロジックを取り込む会社も出てきました。スタートアップなど外部の知恵を取り入れるオープンイノベーションを進めるにはそのことを理解することが重要です。