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石炭関連事業に用いた「除外」はインパクトのある手法だ。

フーレル:「除外」はインパクトがあるように見られ、報道などで注目されがちだが、むしろ「強化」を活用することにより低炭素社会への移行をより効率的に支援したい。

 再保険会社は巨大な機関投資家でもある。我々はできる限り、パリ協定の目的達成を支援していく。気候変動を抑え、低炭素化を加速することは世界的な課題だが、同時にビジネス機会にもなる。

 気候変動の影響が金融業界に与える課題とビジネス機会を認識し、それらにどのように対処するかで、他社の先駆けとなる行動を取るように努める考えだ。

スイス・リーの石炭方針は世界の石炭関連企業にどのような影響が及ぶとみているか。

フーレル:保険の引き受け停止は7月に始まったばかりだ。業界に与えるインパクトを推し量るのは時期尚早だろう。

 一方、2016年に着手した投資の引き揚げでは、市場に影響を及ぼさないように徐々に石炭関連事業と関わる債券や株式から手を引いた。

 同時に、新しく導入したESGベンチマークに基づく投資を強化し、この切り替えを同時進行で進めた。徐々に切り替えたため、市場に大きな影響が生じたわけではないとみている。

中国やインドの石炭火力は保険を受けられない?

国際エネルギー機関(IEA)などによれば、中国やインドなど新興国をはじめとする途上国では、今後も数十年にわたって安価な石炭を使う火力発電への需要が継続するという。それを手がける事業者はみな、スイス・リーの再保険を受けられなくなるのか。

フーレル:特定の企業や業界に対する投資や対話をゼロにしてしまうことはない。企業や業界に「ショック」を与えるのではなく、我々の経験や考えを粘り強く伝え、理解を得ながら、低炭素型の事業への「移行」を強く支援する。

 また同時に、持続可能なインフラやグリーンボンドなどに投資することで、企業が推進する低炭素経済への移行を支援するのが、我が社の役割である。こうしたプロセスを通じて、低炭素社会を構築する必要性を世界のあらゆる企業に伝えたいと考えている。

 我が社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、そして金融安定理事会(FSB)にも積極的に参加している。欧州委員会が今年3月に発表した「サステナブル金融行動計画」の策定に助言を与えた技術専門委員会にも参加した。

 様々な国際的な連携を通じて、投資先企業に働きかけるだけでなく、気候変動の影響を考慮しながら世界の金融安定化を実現するための投資や保険・再保険の枠組みづくりに協力していきたい。

世界の保険業界によるESG投資の動向はどうか。

フーレル:国連によれば、パリ協定が求める低炭素社会を実現するには、2030年まで毎年約1.5兆ドルの投資を要するという。長期投資家の投資振り向けで達成可能だ。世界の保険会社の資産運用額は年間約30兆ドル、年金基金などの機関投資家や政府系ファンドを加えると約80兆ドルに達する。このうちの数%をESG投資に振り向ければいい。我々もこれに貢献する考えだ。

本記事は、「日経ESG」2018年12月号(11月8日発行)に掲載した内容を再編集したものです。