ESG投資はメインストリームになる

ESGの要素が企業の価値を左右するようになっている。

坪田:この夏、日本で発生した台風の被害をはじめ、自然災害や社会で起きている出来事が企業の業績や持続的な成長性に大きな影響を与えるようになってきた。10年、20年前とは世の中のありようが変わっている。気温が上がっていることや、人口動態の変化で消費が変わったり、労働者が不足したりしているのは、その一例だ。

 規制の強化やイノベーションの加速、天然資源の枯渇、気候変動、高齢化社会の進展など、大きな社会変化が企業のビジネスチャンスやリスクになる。しかし、こうしたことは企業が公開する財務情報には反映されてこない。今、情報システムがコンピューターウイルスに侵されるといったサイバーセキュリティーのリスクが大きくなっている。30年前にはリスクとして認識されていなかった。

 ESG、いわゆる非財務情報が企業の今後の成長性に与える影響が大きくなっている。ESGというと大上段に構えたような言い方に聞こえるかもしれないが、あくまで企業を評価する上でESGの観点を取り入れるのは大事な分析のやり方だということだ。

 今は特別なものとして見られているかもしれないが、企業の価値を測る基準として適用が進めば、ESG投資という言葉は早晩、死語になるだろう。ESG投資はメインストリームになる。

 ここ2~3年の動向を見ると、非財務情報を意識した投資行動が顕著になっており、企業の価値を測る上で非財務情報のウエートが増している。ESGを統合した投資が当たり前になるのもそう先のことではないだろう。

 気候変動の影響とみられる自然災害が象徴するように、これまでの前提条件が崩れてきている。企業からすれば、様々な社会の変化を踏まえて経営していかないと価値を高められない。ESG投資が広がっているからやるというのではなく、本気で取り組まないと今後、厳しい局面に立たされるのではないか。

ロベコは企業をESGでどう評価しているのか。

坪田:企業のセクターごとにどういった要素が業績に影響を与えているのかを整理して、企業に質問をしていく。ロベコSAMが実施しているコーポレート・サステナビリティ評価(CSA)では、企業を60のセクターに分けている。例えば、薬品業界の場合、品質と安全管理、革新性、人材マネジメントといった要素が業績に与える影響が大きいと判断して、各社の取り組みを評価する。

 質問の内容は年によって変わる。例えば、ここ数年のトピックでは、(流出の恐れがある)個人情報の取り扱いについて聞くようにしている。数年前だったらここまで大きな問題にならなかった要素だろう。

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