企業の環境や社会課題への取り組みや、ガバナンス(企業統治)も考慮して投資する「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」が世界で広がっている。

 世界持続可能投資連合(GSIA)によれば、世界のESG投資額は2016年に22.9兆ドル(約2755兆円)に達した。これは総投資額の26%を占めており、欧州に限れば既に53%がESG投資になっている。

 ESG投資に早くから取り組んでいるのがオランダに本拠を置く資産運用会社のロベコである。ESG投資では、どのように企業を評価しているのか、運用パフォーマンスは上がっているのか。日本法人であるロベコ・ジャパンの坪田史郎社長に聞いた。

ESG投資を取り入れる機関投資家が増えている。ロベコのESG投資の特徴はどこにあるのか。

<span class="fontBold">坪田史郎氏</span><br>ロベコ・ジャパン社長(写真:北山 宏一)
坪田史郎氏
ロベコ・ジャパン社長(写真:北山 宏一)

坪田:ロベコでは、世界で1020億ユーロ(約13兆円)の資産残高がESG投資の対象になっている。日本の顧客については3600億円を運用している。株式でも外国債券でも、ESG情報の分析を通常の財務情報の分析プロセスに統合している。

 当社の特徴は大きく2つある。まず、長い歴史がある。オランダのロッテルダムに本拠を置くロベコは、1990年代からESGの観点での企業分析を運用のプロセスに統合している。当時はまだ誰もESGに見向きもしなかった。ESG情報の分析を運用手法に取り入れた最も古い会社の1つだろう。

 次に、ESG情報のリサーチ機能やデータベースを社内に持っていることだ。株式や債券の運用にこのデータベースを生かしている。スイスのチューリッヒに本拠があるグループ会社のロベコSAMが、各企業をESGの観点で分析し、データベース化している。

ESGを企業の評価に取り入れると運用のパフォーマンスは上がるのか。

坪田:ESGの観点を運用プロセスに統合するというのは比較的新しい分野であるため、過去に遡ってパフォーマンスが良かった悪かったと定量的に評価するのは難しい面はある。ただ、米企業の調査によると、ESGなど無形資産が株価に与える影響が大きくなっている。

 さらに、(米S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが提供する)「S&P/TOPIX 150指数」と、このインデックスにESGの要素を加えた「S&P/TOPIX 150 ESGファクター・ウェイト指数」を比べたところ、後者の方がリターンが大きいという結果も出ている。学術的にも、ESGを統合した運用はパフォーマンスにプラスの影響を与えると言われている。

ロベコSAMが算出するESGファクター・スコアに基づいてTOPIX150社の銘柄の構成比率を決定した「S&P/TOPIX150 ESG ファクター・ウェイト指数」と「S&P/TOPIX 150指数」を比較した<br> 出所:S&P Dow Jones Indices LLC(S&P Global の一部門)
ロベコSAMが算出するESGファクター・スコアに基づいてTOPIX150社の銘柄の構成比率を決定した「S&P/TOPIX150 ESG ファクター・ウェイト指数」と「S&P/TOPIX 150指数」を比較した
出所:S&P Dow Jones Indices LLC(S&P Global の一部門)
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