投資家は、企業の「気候戦略」を見ている

投資家は果たして、企業の開示情報を参照するだろうか。

藤村:TCFDはモメンタム(勢い)を拡大するため、世界で500社を目標に支持を表明する企業を募っている。一方、個々の企業として支持を表明するかどうかは別として、提言に基づくシナリオ分析や将来戦略の策定を実施し、開示しなければならない時代が来るだろう。

 投資家は今、企業の開示情報の評価と投資判断への組み込みを試行的に発展させている段階にあるため一概には言えないが、企業との対話で提言に基づく開示情報が題材として活用されるようになるだろう。さらには、今後の事例を注視する必要があるが、投資家や金融機関による個別の投資や融資の判断にも、提言が影響を及ぼすようになると見込まれる。仮に投融資の判断に組み込まれれば、多くの企業にとってTCFDへの対応が死活問題となるだろう。

 企業がTCFDを活用し、将来の気候変動の影響や、脱炭素社会への移行を見据えて体制を整備し、戦略を策定することは、投資家や金融機関にとっての関心事である。そして企業自身にも、中長期にわたる強靭な経営を実現する上で不可欠といえる。

 提言に基づく情報開示を検討する際は、サステナビリティ担当部署に限らず経営者を含む全社で、気候リスクによる事業への影響や、それに基づく将来戦略の立案の必要性を理解し、議論する必要が自ずと生じるだろう。サステナビリティ担当者は他部門や経営者を巻き込んで体制を整備するために、提言やシナリオ分析に対する世界の関心の高まりを「良い機会」として利用してほしい。

 本記事は、「日経ESG」2018年10月号(9月8日発行)に掲載した内容を再編集したものです。