「恒久的株主」はリスク注視

 機関投資家として存在感を増しているのが、米ブラックロック、米バンガード、米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズなどの大手インデックス運用会社である。

 インデックス運用は、複数の企業に分散投資し、特定指数に連動する運用成績を目指す投資手法である。インデックス運用を使った金融商品である上場投資信託(ETF)の世界の運用資産残高は4兆9690億ドル(542兆円)に上り、多くの米国大型株で大手3社が株式の2~3割を握っていると言われている。インデックス運用会社は、金融商品が存在し続ける限り企業の株式を持ち続ける「恒久的株主」といえる。

 バンガードのグレン・ボーラム氏は、「形式的なガバナンスは業績につながらない。それは業績を長期的に見れば明らかになる。我々には企業と長期的に対話をする覚悟がある」と話す。形式的なガバナンスと判断すれば、対話や議決権行使という手法を駆使してプレッシャーをかけていく。

 同社が注目するのは、企業のリスク対策だ。取締役会がリスクを監視できているかや、リスクに対してどのように対応しようとしているのかを念入りに問いただすという。

 ステート・ストリートも経営の監視体制の強化を重視している。特に重視しているのが女性取締役の採用だ。同社の遠藤信也氏は、「取締役の多様性が経営の監視を強めることにつながる」と話す。

 同社は、「取締役会ダイバーシティ指針」を設定し、取締役会に女性役員や女性役員候補がいない場合、株主総会で取締役の選任議案に反対票を投じている。これまで、米国、英国、オーストラリアの女性取締役がいない大企業約700社に書簡を送付するなどの活動を展開してきた。

 今年、いよいよ日本企業が議決権行使の対象となった。日本の時価総額上位500社に、女性取締役の有無や採用時期などを問う書簡を送付し、女性取締役の有無や採用方針などを確認した。最終的に150社に何らかの反対意見を表明したという。

インデックス運用大手
「恒久的株主」として
リスク監視体制に注目

<span class="fontBold">グレン・ボーラム 氏</span><br />米バンガード ファンド・ファイナンシャル・サービス部門 インベストメント・スチュワードシップ統括責任者
グレン・ボーラム 氏
米バンガード ファンド・ファイナンシャル・サービス部門 インベストメント・スチュワードシップ統括責任者

ボーラム:我々は、インデックス運用商品が存在する限り企業の株を持ち続ける「恒久的株主」だ。企業と対話し続ける覚悟がある。取締役会が、リスクを監視できているかどうかに注目しており、取締役の独立性や多様性を重要視している。見せかけのガバナンス対応は、業績につながらない。結果の出ない企業に対しては、対話の機会を増やし、議決権行使を通じて我々の主張を訴えていく。

インデックス運用大手
社長の選解任や女性取締役
投資家視点の開示必要

<span class="fontBold">遠藤 信也 氏</span><br />米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ GEBSグループ・ヘッド
遠藤 信也 氏
米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ GEBSグループ・ヘッド

遠藤:日本企業では、現社長を含む社長経験者が次期社長を指名することが多く、社長の選任理由や育成計画が不透明だ。選任基準を公開している企業もあるが、当たり前だったり形式的だったりするものが多い。勝てる経営者をどうやって選ぶのかという投資家視点の情報公開が必要だ。女性取締役を経営に生かすという視点も欠かせない。結果の出ない企業に対しては対話を強化していく。

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