今年6月1日にコーポレートガバナンス・コードが改訂された。取締役会の役割強化や取締役の多様性など、様々な面で企業に改革を迫っている。金融庁と日本取引所グループは、企業に対して今年中に改訂コードを踏まえたコーポレートガバナンス報告書の提出を求めており、対応は待ったなしだ。

 投資判断に当たってESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する「ESG投資」が進んでいる。改訂コードでも、ESGを含む非財務情報の開示や取締役会の積極的な関与を求めている。

 国内外の機関投資家は、日本企業のガバナンス改革を投資機会と捉えて目を光らせている。日本企業は何を期待されているのか。どこに課題があるのか。国内外で影響力を持つ、海外資産運用会社、アクティビストファンド、インデックス運用会社、議決権行使助言会社に取材した。

後継者育成に落とし穴

 欧州最大の資産運用会社である仏アムンディ・アセットマネジメントの子会社であるアムンディ・ジャパンの藤田泰介ディレクターは、「ガバナンス改革による日本企業の伸びしろに注目している」と話す。アムンディの資産運用残高は約190兆円で、そのうち22兆円以上をESG投資などの責任投資として運用しており、世界で先行してESG投資に取り組んできた。

 ESG投資は長期視点で投資を判断する。その際、藤田ディレクターが注目するのが、次の社長を選ぶプロセスである。「経営者との対話でよく話題に上るが、できる経営者ほど自分がいるから大丈夫と思いがち」と話す。明確な後継者育成計画(サクセッションプラン)を持つ日本企業は少ない。

 「ガバナンスを含むESGの取り組みは、短期的な株価上昇にもつながる」と語るのは、ストラテジックキャピタルの丸木強社長だ。丸木社長は村上ファンド出身で国内アクティビストファンドの第一人者。これまで様々な企業に対して、政策保有株の売却や、利益剰余金の株主還元などを迫ってきた。

 丸木社長は、実効性あるガバナンス改革と、情報開示を適時に実施することで、投資家が見積もるリスクを下げられるとみている。これが株価の上昇につながる。

 丸木社長が注目するのは、社外取締役である。「社外取締役は少数株主の代表に他ならない。この役割を分かっていない社外取締役が多い」と指摘する。経営者だけでなく、社外取締役との1対1の対話も重視しているという。

欧州最大手資産運用会社
「自分がいるから大丈夫」
できる社長の落とし穴

藤田 泰介 氏
アムンディ・ジャパン 運用本部ファンダメンタル運用グループ長ディレクター
(写真:中島 正之、以下同じ)

藤田:日本企業のガバナンスが、欧米企業に追い付いてきた。欧州ではガバナンスをはじめとするESGの優良企業は業績も良い。日本のESG投資は緒に就いたばかりなのではっきりとした相関は見られないが、日本企業には伸びしろがある。業績の出ている経営者ほど「自分がいるから大丈夫」と思っている。経営者は対話の場で、財務の見通しだけでなく、次期経営者の育成についても語るべきだ。

国内アクティビストファンド
「お辞めになった方がいい」
経営者にはストレートに言う

丸木 強 氏
ストラテジックキャピタル 社長

丸木:経営者の役割は、株主価値の最大化に他ならない。これを分かっていない経営者が多い。ガバナンスをはじめESGは長期的な取り組みだが、短期的にも株価を押し上げる。株価が上がらないのは、実施して当たり前と思われているからだ。多くの機関投資家は、経営者にはっきり物を言わない。見せかけの対応をする経営者には、「お辞めになった方がいい」と、本音をぶつける。それがアクティビストの役割だ。