デパートで3世代に訴求

 消費者に最も近いコンビニでも、サステナブル・シーフードの展開が始まった。ミニストップは2018年1月、MSC認証の紅ザケのおにぎりを東京・千葉・茨城の約300店舗で発売した。包装フィルムの前面に認証ロゴが印刷されている。おにぎりへの認証魚の採用はコンビニ業界初だ。

ミニストップに並ぶMSC認証の紅ザケのおにぎり。認証ロゴが目立つ

 「コンビニの客は持続可能な食材への意識が高くない30?40代の男性が多い。認証魚への気付きを与え、持続可能性の取っ掛かりを作りたい」と第一商品本部米飯・調理パンチームの加藤里香氏は意気込む。

 イオンも2017年12月、MSC認証の紅ザケとタラコのおにぎりを発売した。グループ傘下のミニストップはイオンと同じ原料を使うことでスケールメリットを出し、値段を通常のサケのおにぎりと同じ140円にした。委託生産工場の認証ロゴ使用料はミニストップが支払い、従業員教育を実施して実現にこぎ着けた。

 セブン&アイホールディングス傘下のそごう・西武は、家族で訪れる傾向が強いデパートの強みを生かし、サステナブル・シーフードを訴求している。同社はアラスカシーフードマーケティング協会の「責任ある漁業管理(RFM)」認証の天然水産物を、2016年から販売してきた。RFM認証は、世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI)から「FAO(国連食糧農業機関)のガイドラインに準拠している」と認定されたサステナブル・シーフードである。

 有名シェフによる料理実演を交えてアラスカ産サステナブル・シーフードの店頭販売イベントを開催してきた。2017年は12回のイベントを開いた。「デパートは3世代が一緒に訪れる場所で、楽しい体験イベントは記憶に残る。イベント後に持続可能性の重要性を解説することで販売に結び付けている」。そごう・西武の加納澄子CSR・CSV推進室シニアオフィサーは手応えを感じている。

配合飼料で完全養殖マグロ

日本水産が発売した完全養殖クロマグロ。飼育時の餌を配合飼料に切り替えた

 水産会社でもサステナブル・シーフードの生産が加速してきた。水産大手の日本水産は、MSC認証の水産物を用いた加工食品やASC認証のブリを生産・販売してきたが、2018年3月には完全養殖クロマグロを発売した。完全養殖マグロはマグロ資源に負荷をかけない一方で、飼育時に他の魚資源を餌として使うため「必ずしもサステナブルではない」という議論がある。そこで同社は餌を配合飼料に切り替え、魚資源への負荷を減らす取り組みを進めた。2018年度に7500匹、2019年度に2万匹の出荷を目指す。

 完全養殖クロマグロは近畿大学やマルハニチロ、極洋も生産・販売しているが、日本水産は餌の改良や流通時の包装を工夫し、「マグロに含まれるビタミンEやイノシン酸を多くし、色の劣化も遅くした」と、養殖事業推進部担当執行役員の前橋知之氏は差別化の特徴を話す。ふ化後の餌は、イシダイやキスの子供を使わず配合飼料に置き換え、海のいけすに移した後の餌は、魚粉と植物タンパクから成る配合飼料などにした。

 「完全養殖マグロの利点はトレーサビリティを確保できること。餌を配合飼料に置き換える努力を続ける」と前橋氏。五輪に向けサステナブル・シーフードの取り組みはサプライチェーン全体に広がってきた。

「日経ESG」2018年6月号の記事を転載