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 ESG(環境、社会、ガバナンス)を重視する投資家が石炭産業から投資を引き上げる「ダイベストメント」の動きが活発化している。

 約1兆ドルを運用するノルウェー政府年金基金は2015年に、石炭産業に投資をしない方針を決めた。世界保険大手の仏アクサは昨年12月に石炭火力発電プロジェクトとオイルサンド事業への保険サービスの停止を発表した。ドイツのアリアンツ、スイスのチューリッヒ保険なども同様の方針を公表するなど、欧州の金融機関を中心にダイベストメントの動きが加速している。

 一方、日本では石炭火力発電を、安定供給や経済性で優れたエネルギー源と位置付けて推進している。低炭素型の石炭火力発電所の開発も進めており、海外展開をにらむ。

 世界の投資家は、日本のこうした姿勢をどう見ているのか。石炭産業への投資をウオッチする国際NGOに聞いた。

ESGを重視する世界の機関投資家は、石炭火力発電所をはじめとする石炭産業への投資をどう見ているか。

グリーンピース・ノルディック 持続可能な金融キャンペーナーのマーティン・ノーマン氏(左)。グリーンピース・インターナショナル エネルギー金融キャンペーナーのマリナ・ロウ氏(右)

ロウ:世界の投資家は、気候変動を環境リスクだけでなく金融リスクと捉えている。世界金融危機と同様のリスクを抱えているという認識だ。気候変動の影響によって約24兆ドルの資産に物理的なリスクがあると言われている。これに加えて投資家が注目しているのが、低炭素社会への移行に乗り遅れる「移行リスク」だ。89兆ドルもの投資機会を逃すリスクである。率直に言って日本政府の対応は遅れている。政府の動きに合わせたまま何もしないでいると、多くの日本企業が被害を被ることになるだろう。

ノーマン:欧米の投資家は、気候変動の要因となる事業から投資を引き上げる「ダイベストメント」の動きを加速している。代表が石炭産業だ。石炭を利用する企業、石炭火力発電を続ける電力会社、タールサンドの採掘会社、新たに石炭利用を増やそうとするビジネスなどが対象である。

 約1兆ドルを運用するノルウェー政府年金基金は、2015年に石炭産業に投資をしない方針を決めた。こうした動きは今後、規模の小さな投資家にも波及し、対象も石油や天然ガスなど化石燃料全般に広がっていくだろう。

 日本の政府と企業に知っておいてほしいのは、世界の投資家は、「石炭に関係すること自体がリスク」と捉えていることだ。製品を作る工場の電力に何を使っているかということにも注目している。

ロウ:米グーグルや米アップルなどは、ノルウェーなどの北欧にデータセンターを設置している。背景にあるのが、再生可能エネルギーの利用しやすさや、再エネに対する国の姿勢だ。日本は現状、再エネの供給が十分とはいえない。こうした状況が続く限り、グローバル企業の進出先から日本は除外される。