アティラさんの話を聞いてモンゴルで見た羊のと畜を思い出した。モンゴル人は羊を最もよく食べるが、羊はあお向けにされて空を見上げたかたちでほふられる。そして一滴の血も大地に流さないようにお腹を切り開いて解体し、肉や血を食べ、皮は衣類にして余すことなく利用する。そこにあるのは厳しい自然とともに生きる遊牧民たちの、万物を恵む天と地への感謝の念なのだそうだ。
ハンガリー人は、ウラル山脈を故郷とする遊牧民族マジャール人が多数を占める。9世紀末にハンガリーに定住してからは農耕を中心とした生活になったが、脂身から出た油をも大事に食べる姿には、遊牧民のDNAが表れているのではないかと思う。
ダイエットは明日から
ただ、最近は肥満など健康面への意識が高まり、ラードの摂取を控えてひまわりの油などを使う若者が増えているらしい。豚肉の消費量も1980年には一人当たり年間70キロで世界1位だったのが、近年は30キロ程度にまで減っているようだ。さらに、2011年9月には塩分や糖分の高い食品、清涼飲料水に課税する通称「ポテトチップス税」まで施行されている。
「でもやっぱりみんなラードが好きで、つい食べちゃうんですよね」
アティラさんの言葉に、また自分のお腹周りに目を落とす。そうなんです、わかっていても止められない。まあ、明日からダイエットすればいいやと残りのラードパンをほおばるのであった。

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(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版公式サイトに掲載した記事を再掲載したものです)
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