食前酒にパーリンカ、食事中にワインを飲むハンガリー人。胃を休めるために、最後に飲むのがこのウニクムというハーブのリキュール。しかし、これも40度ほどある
食前酒にパーリンカ、食事中にワインを飲むハンガリー人。胃を休めるために、最後に飲むのがこのウニクムというハーブのリキュール。しかし、これも40度ほどある
[画像のクリックで拡大表示]

 だからハンガリーでは60~70度もあるパーリンカを自分たちでつくる。それをすきっ腹に飲むと胃がほどよく動き出すので、そこにテペルトゥを食べるのが最高らしい。ワイルドすぎるぞ、ハンガリー人。

 テペルトゥの調理自体はとても簡単だ。脂身を3~4センチの角切りにして、油を少し引いたフライパンにいれ、塩を少々ふってじっくりと炒める。溶け出た精製ラードで脂身の表面がカリカリになれば食べごろだという。

「今日は特別にマンガリッツァ豚の脂身でテペルトゥをつくります」

国宝マンガリッツァ豚

 アティラさんの言葉に参加者の数人から感嘆の声があがった。聞けば、マンガリッツァ豚はハンガリーにしかいない品種で、牛肉のように色が濃くやわらかい赤身と良質な脂肪が特徴。その脂には血中のコレステロール値を下げる働きがある不飽和脂肪酸が多く含まれ、さらにビタミンや亜鉛などのミネラルも豊富。とてもヘルシーな豚だそうだ。

「脂の融点が普通の豚より低く、サラサラしています。その肉質と希少性から2004年には国宝に認定されたんですよ」とアティラさん。飼育管理も政府がおこなっていて、ハンガリーでもふだんはなかなか食べられないらしい。日本にもブランド肉はいろいろあるが、国宝とはレベルが違う。

 焦げないように時折かき混ぜながら脂身を炒めていく。溶け出す油はキラキラと透き通っていてなめらかだ。火にかけてから約30分、こんがりと揚がったテペルトゥが完成した。

マンガリッツァ豚は国立公園で放し飼いにされているという。餌も制限していないので、豚が食べたものによって肉の味が違うそうだ(写真提供=ハンガリー政府観光局)
マンガリッツァ豚は国立公園で放し飼いにされているという。餌も制限していないので、豚が食べたものによって肉の味が違うそうだ(写真提供=ハンガリー政府観光局)
[画像のクリックで拡大表示]
テペルトゥやスープをつくるには欠かせないとアティラさんがハンガリーから持ってきたホーロー鍋で調理
テペルトゥやスープをつくるには欠かせないとアティラさんがハンガリーから持ってきたホーロー鍋で調理
[画像のクリックで拡大表示]
マンガリッツァ豚のテペルトゥが完成。テペルトゥは鶏やあひるの肉などでもつくるが、やっぱり豚が一番だという
マンガリッツァ豚のテペルトゥが完成。テペルトゥは鶏やあひるの肉などでもつくるが、やっぱり豚が一番だという
[画像のクリックで拡大表示]

次ページ 新鮮さが大事