店では月に一度、ハンガリー料理の教室を開催しているという。設永さんのお誘いに「ラードをつくる? あっさり?」などと、いろいろなクエスチョンを抱えながら、私は東京メトロの白金高輪駅からほど近い店を訪れた。
「今日の料理はテペルトゥです」
店に集まった参加者に料理の説明を始めるオーナーのキス・アティラさん。日本に来る前はハンガリーの人気アイドルグループの一員だったという異色の経歴の持ち主だ。方向性の違いからグループを解散し、以前から興味があった日本にやってきた。日本人にハンガリーのことを知ってもらいたいと店を始めて6年目になるという。
「テペルトゥは豚の脂身を炒めて溶け出た油で、その脂身を揚げた料理です」とアティラさん。つまりラードのから揚げであり、テペルトゥが完成したあとに残る溶け出た油を冷やし固めた「精製ラード」をパンに塗って食べるのだそうだ。
朝食の定番
「ハンガリー人にとってテペルトゥはアペタイザーやおやつとしてとてもポピュラーだし、ラードを塗ったパン、ジーロシュ・ケニェールは朝食の定番なんですよ」
朝からジーロシュ・ケニェール(ラードパン)を食べ、おやつにラードのから揚げを食べる……ハンガリー人の胃は屈強だ。驚いてそう言うと設永さんが、「そうなんです」とうなずく。「お酒もすごく強いんです。食前酒に飲むパーリンカという蒸留酒は一般的なもので40~50度あるんですが、ハンガリー人のお客様はみんな、それじゃあ物足りないと言うんですよ」(※日本酒の平均度数は15~16度)
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