「台湾では焼き餃子より水餃子。だって、そのほうが皮はぷりぷりで野菜はシャキシャキ、素材本来の甘みや香りが楽しめるでしょう。だから、台湾では醤油やラー油もあまりつけないよ。家庭では一度にたくさん餃子をつくっておいて、まず水餃子にして、残ったものを焼き餃子にして食べることが多いね」

 出来立てを食べてとの言葉に、水餃子を口に入れるとジュワーッと熱々の肉汁が飛び出した。ハフハフしながら噛むと野菜の甘みが舌に染みわたる。皮も厚めで食べごたえがあり、これが主食の貫禄かと納得する。

 続いて、牛肉麺をズズーッとすすった。甘めのスープは牛骨の旨みが出ていてコクがある。肉は口のなかでほろりと崩れ、麺とスープと絶妙に絡み合って舌の上で踊った。一説ではあるが、牛肉麺は台湾に住む中国四川省出身の老兵が、地元でよく食べられていた牛肉の煮込み料理を改良したのが始まりだと言われている。

「昔は、台湾人は牛を食べなかったんだよ。ほとんどの人が農業に従事していて、牛は一緒に働く仲間とみなしていたんだ」と錢さん。実際、台湾人は牛肉麺以外の牛肉料理はあまり食べないし、年配の人にいたっては牛肉自体食べない人も多いという。牛肉麺は台湾料理にひとつの革命をもたらしたものなのかもしれない。

錢爺の水餃子はタレをつけず、お好みで自家製の麻辣油を。水餃子は台湾に限らず、中国本土でもよく食べられている
台湾の牛肉麺はもっとサイズが小さいと錢さん。牛肉を置かない店が多いこともあり、牛肉麺は専門店が充実している