欠かせない料理かあ……。そういえば、同じく台湾名物といわれる小籠包はどうなんだろう。朱さんに尋ねると、これまた大きく首を振る。「実は小籠包はそれほど食べないんです。小籠包は観光アピールで有名になった料理で、台湾人には水餃子のほうがずっと馴染みがあります。そうそう、水餃子といえば、日本に来てすごく驚いたことがあったんです。日本人はなぜ餃子とごはんを一緒に食べるんですか?」

 その質問の意味がよくわからなかった。だって、餃子はおかずじゃないか。そう答えると、「いえいえ、違います」と朱さん。「餃子の皮もごはんも炭水化物です。台湾では炭水化物と炭水化物を一緒に食べたりはしません。餃子を食べる時は餃子だけを20個食べたりします。餃子は主食であり、肉と野菜も一緒にとれる完全食なんです」

 そうなの!? こっちがびっくりしましたよ。じゃあ、ラーメンとライスは論外か。でも、そう考えると魯肉飯と野菜炒めを食べるのも合点がいく。台湾人は栄養バランスを考えながら食事をとっているのだ。

「私は水餃子より焼き餃子のほうが多いことにも驚いたよ」

台北北部の北投温泉出身の錢さんは1988年に来日。師匠が、陳建一の父親で日本における四川料理の第一人者・陳建民の兄弟子にあたるという

 そう話すのは、横浜市営地下鉄の阪東橋駅が最寄りの台湾料理店「錢爺(ぜにや)」の主人・錢享利(セン・キョウリ)さん。台湾政府認証の調理師免許を持つ料理人だという話を聞いて、ここの魯肉飯も食べてみたいと思い、訪れたのである。

「なに、台湾のソウルフードを食べにきたのか。わかった、ちょっと待ってて」と言うが早いか調理を始めた錢さん。「魯肉飯を……」という言葉が聞こえていたのかはわからないが、あっという間に私の目の前に3つの料理が並んだ。「水餃子、魯肉飯、牛肉麺。台湾料理はいろいろあるけれど、この3つは特に名物だと思うよ」と笑う。

 私一人にはボリュームあり過ぎる料理に圧倒されつつ、やっぱり水餃子もポピュラーなんだとつぶやくと、錢さんが話し出した。