「日本でいう佃煮をごはんにかけているような感覚でしょうか。人によりますが食べる頻度は高いですね。毎日食べる人もいます。台湾は朝食専門の店があるくらい外食文化が充実しているので、それぞれお気に入りの食堂などで食べることが多いですが、家でもつくります。私の家では具をたくさんつくっておいて麺や茹で野菜にからめたりもしますよ」
朱さんの言葉から、生活に密着した食べ物であることがうかがえる。当然のごとく店ごと、家庭ごとに味付けが異なるというので、さっそく店の魯肉飯を出していただいた。
2つ目の魯肉飯はまず、見た目からして違った。同じ豚肉ではあるが、細切れ肉のひげちょうに比べて物産館の魯肉飯には1センチ角の肉が入っている。しかも肉汁が控えめで、醤油のさっぱりとした風味が強い。ムチムチとしたシイタケの食感が小気味よく、こってりが苦手な人もさらりと食べられそうだ。ひげちょうがレトルトであることを考慮しても、これだけ違うと食べ比べもおもしろい。
「皮付きの豚肉のブロックを細かくしてシイタケや油ネギ(エシャロットを揚げたもの)と炒め、台湾醤油や砂糖、米酒、ショウガ、八角などの調味料で味を付けてじっくりと煮込んでいます」と朱さん。なるほど、味付けなんかは佃煮っぽい。しかし、「挽き肉じゃないんですね」と私が言うと朱さんは大きく首を振った。
「一緒に入れる野菜や味付けが違っても、魯肉飯に挽き肉を使うことはありません。挽き肉を使った料理は別にあって肉燥飯(ロウツァオファン)と言うんですよ。肉の脂身が少ないぶん、魯肉飯よりあっさりしています」
なんと、私の「そぼろごはんのようなもの」という表現は正しくないようだ。朱さん曰く、味付けは全般的に南のほうが甘く、魯肉飯にも氷砂糖を入れて照りと甘みを出したりするそうだ。「台湾の豚は臭みがなくて美味しいんです。台湾人は肉の中で豚を一番よく食べるし、魯肉飯は欠かせない料理ですね」と朱さんが言う。
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