そこに、本来はピタパンの中に具を入れて食べるところを、ラップサンドというオシャレなスタイルで提供したことがうけたのだろう。そして、日本に馴染みがあったヨアンさんが、このスタイルとファラフェルなどの味が日本人にも合うに違いないと2015年11月に東京店を開いたのだ。厨房に立つのはレバノン人が中心。この日は会えなかったが、創業した兄弟も数カ月に一度、来日しているそうだ。
話を伺いながらファラフェルサンドにかぶりついた。ファラフェルの衣はサクサクで、その中にギュッと包まれた具はホモスより粗く豆の食感が小気味いい。ちょっとピリ辛なのは唐辛子を使った調味料「ハリッサ」をアクセントにしているから。イスラム系の国の中でもチュニジアなど北アフリカでよく使われる調味料で、レバノンではそれほど用いないが、日本人の多くが「ピリ辛」を好むので入れているのだそうだ。
その国に合わせてテイストをちょっと変えるのも、レバノン料理を好きになってもらいたいから。創業者の思いは遠く日本の店で働くレバノン人たちにも受け継がれているんだなあ。そうしみじみ思っていると、カッセムさんが笑顔で言った。
「レバノンは中東でもとくに美人が多いと言われているけれど、それはヘルシーな料理のおかげだよ。かわいい子はだいたいベジタリアンさ」
なに、その言葉のマジックは。これはあやからねばならないと、ホモスをほおばる夏の夕暮れであった。
(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版公式サイトに掲載した記事を再掲載したものです。情報は2016年9月30日時点のものです)
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