ヨアンさんはリヨンの大学に通っていたときに「アドニス」を知った。レバノンにも何度か訪れているという
ヨアンさんはリヨンの大学に通っていたときに「アドニス」を知った。レバノンにも何度か訪れているという
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 もともと、レバノンやイスラエル、パレスチナ、シリア、ヨルダン、トルコ南東部の地域一帯はシリア(歴史的シリア)と呼ばれていた。肥沃な土地で交通の要衝でもあったため、古くからイスラム王朝やオスマン帝国などの支配を受け、現在の国境は第一次世界大戦後に人為的に引かれたもの。つまり、各国の文化や食生活には共通点も多く、ホモスの発祥を特定するのは難しい。

 そこに加えて、1970年代、中東和平問題の影響でイスラエルが南レバノンを占領。2000年に撤退したものの、一部の土地をめぐるなどして両国の緊張状態はいまも続いている。ホモス・ウォーはそんな両国の関係をなぞらえつつも、平和的な争いであることにちょっぴり心が和む。

 ところで、なぜレバノン料理のレストランではなくファストフード店にしたのか。オーナーのヨアンさんに伺うと、「そもそもアドニスの本店はフランスのリヨンにある」という。

「フランスに移住したレバノン人の兄弟が、母国の伝統料理を忙しく働く人たちに手軽に食べられるスタイルで提供しようと、1999年にオープンさせました。これが瞬く間に人気になり、現在はリヨンに5店舗を展開しています」

 もともとレバノンは一時的にフランス領だったこと、キリスト教徒が多いことから欧州の影響を受けていて料理も洗練されている。しかも、その料理は豆や野菜が中心でヘルシーなため、欧米のセレブの間で注目されているという話は耳にしたことがある。確かに今日はひよこ豆づくしだし、メゼも他国に比べて野菜が多いらしい。