アフリカ系の人々がマレー系より先に住んでいたのかははっきりしないが、やがてアラブ系民族も暮らすようになり、大航海時代には欧州の人々も訪れるようになって、19世紀の末にマダガスカルはフランス領となった。「1960年にフランスから独立しましたが、私たちはフランスではビザが必要ありません。車はフランス製ばかりだし、言葉もマダガスカル語よりフランス語のほうが通じます。グリンピースを意味するプティポワもフランス語。そもそもグリンピースは古来の食材ではないのでマダガスカル語がないんです」
実は、エノキソア・プティポワを食べた時、洗練された味だなと感じた。それは、エリックさんが一流シェフだからなのだろう、と思っていたが、それだけではなかった。マダガスカル料理は世界各国の文化がつくりあげた味なのだ。皿の上にのったごはんとエノキソア・プティポワ。この中にはアジアやアフリカ、フランスの文化が入っている。「マダガスカルプレート」という言葉には、そんな意味も込められているのかもしれない。
エリックさんはいま、そんな母国の料理にある思いを抱いている。「私は父の仕事の関係でイタリアに住んだことをきっかけにイタリア料理のシェフになりましたが、お母さんに教わったマダガスカル料理は私の原点だし、誇るべきものです。でも、マダガスカルの観光客が泊るホテルはフレンチばかり。もっと母国の料理のすばらしさを伝えるべきです。シンプルでうけないというのなら、フレンチスタイルでおしゃれに提供すればいい。マダガスカル料理は美味しいんだから」
エリックさんが店で出すマダガスカル料理も日本人に合わせて、おしゃれで食べやすくしている。そうやって間口を広げることで、自分が好きな日本の人にもっと母国を知ってもらいたい。マダガスカルプレートにはそんな郷土愛ものせられている。
JAZZ Livehouse NARU
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(このコラムは、ナショナル ジオグラフィック日本版公式サイトに掲載した記事を再掲載したものです。情報は2016年8月25日時点のものです)
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