生徒一人ひとりに卒業証書がロッドから手渡され、小林と谷家と一緒に記念撮影。最後に、ロッドがスピーチした。「3年前にISAKの成功をどう測るかと問われた際に、『大学の進学リストではなく、社会にどれだけインパクトを与えられるかです』と話したことを思い出します。第1期生のみんな、素晴らしい旅路を一緒に歩んでくれて本当にありがとう。そして、あなたたちの中から未来のISAKの教員もしくは校長が生まれる日を楽しみにしています」。

卒業式の最後に、帽子投げが行われた。海外の大学での恒例行事だが、生徒の希望で取り入れた

大きな転機となるUWC加盟

 初めての卒業生を輩出したISAKは、次の段階を迎える。8月にUWC(ユナイテッド・ワールド・カレッジ)に正式加盟、「UWC ISAK Japan」となる。UWCは、アメリカ、イギリス、ノルウェー、カナダ、シンガポール、香港、インド、イタリア、コスタリカなど、世界中で16の学校を有し、9500人以上の学生が通う国際的な民間教育機関だ。

 UWCのネットワークに加わることにより、約155ヵ国にあるUWCの「ナショナルコミッティー」と呼ばれる委員会で、3500人を超えるボランティアスタッフが志願者を募集、選抜して各加盟校に送り込む。生徒の多様性にさらなる広がりと深みが増すことが期待される。国際感覚豊かな優秀な教員も集まる。教員の求人倍率は開校時ですでに10倍近くあったが、UWCの加盟が明らかになると100倍にも膨れ上がっているという。UWC卒業生のために設けられている大学奨学金が認められる資格を得られるメリットも大きい。

 そして、小林自身も新たなステップを踏む予定だ。これまでにも積極的にさまざまな学びの場を設けてきたが、8月から半年間、イエール大学の「Yale World Fellow 2017」で留学する。世界で2000人を超える候補者からグローバルリーダー16人の1人として選ばれたのだ。

 「このプログラムは、これまで公的に貢献してきた人たちのさらなるスキルアップを目的としています。いわゆるポスドク(博士研究員)の位置づけです。『自分でやりたいことを自由に学びなさい』というスタイルで、イエール大学にあるリソースを活用できます」。

 小林は、国や県の教育施策に関わり、主に現場での経験値や教員の声を伝えてきた。次第に、「体系立てて教育の知識を学ぶ必要があるのではないか」という思いが募ってきたという。さらに、教育政策にとどまることなく、全世代型社会保障政策といった施策にも興味が湧いてきた。「ISAKで学ぶ生徒のためだけでなく、より広い次世代の若者に、彼らが誇れる、希望が持てる社会を引き渡していきたい。そんな思いがあって、参加を決めました」と小林は明かす。

 UWC加盟と小林の学びは、ISAKにどのような変化をもたらすか。“教育のイノベーション”に挑戦し続ける姿勢に変わりはない。

(文中敬称略)

本連載が書籍になりました!

 日本初の試みとなる、全寮制インターナショナルスクールの開校。約4年にわたって、その軌跡を追ってきた本コラム「軽井沢にアジアのための全寮制高校を作ります!」が書籍になりました。

 「少数の強いリーダーが全体を引っ張っていくような米国型のリーダーシップのモデル以外にも、日本らしさやアジアらしさを生かした多様なリーダーシップのモデルがもっと意識されてもいいと思うのです」(小林りん)。そのために、ダイバーシティーの環境に身を置いて、リーダーシップを養う教育の場を用意したい。

 そんな思いから始まったプロジェクト。しかし、そもそもどうやって学校を作ればいいのか。ゼロからの取り組みが結実するまでの奮闘を描いています。