参加者は10人。「南京大虐殺」をテーマに、保守派的な考えを持つ人々の特徴をまとめた資料を読んだグループと、革新派的な考えを持つ人々の特徴をまとめた資料を読んだグループに、あえて口げんかをしてもらう。保守派と革新派それぞれの気持ちを自分にトレースしてもらうのが狙いだ。その後、改めて「南京大虐殺」についての詳しい資料を配布し、論理的な議論を実施した。一連のワークショップを通じて、参加者たちは「口論」と「議論」の違いを比較する。この違いこそが感情であるというわけで、「こんな感情がある」という点に気づいてもらうのが目的だ。

 今回のワークショップで得た成果を基に、プロジェクトをさらに深めていく。コウスケもナオキも、お互いの議論を深め合えるプロジェクトメンバーがいることへの喜びと充実感にあふれていた。大人にとっても頭を抱えてしまうような難しい問題だが、まだまだ掘り下げていく覚悟を決めているようだ。

関心は動物保護からフェアトレード、英語教育まで

 ほかにも、日本の犬猫の殺処分の数をゼロにするための法案を提出することをミッションとする動物保護プロジェクトや、「ベトナムの貧困層に本を届けたい」という思いから始まったプロジェクト、フェアトレードを学んでISAKでチャリティーショップを始めたプロジェクトもある。

 軽井沢にある地元の小学校で英語のレッスンを提供するところから始まったプロジェクト「B-Right」は、タイのビルマ難民に英語を教えるプロジェクトも開始した。春休みにはプロジェクトメンバーが現地へ渡ったが、そこで「実は現場で教える教師たちが英語を話せない」という驚くべき現実を目の当たりにする。現在は、タイの教師に英語の教え方を学んでもらうプログラムを開発しているところだという。

 別グループではタイの農村部の子供たちにリーダーシップ教育を提供しようというプロジェクトも発足している。春休みにタイへも現地調査に行き、現在本質的な課題を探っているところだ。

 生徒はそれぞれに違う分野に興味を持ち、それぞれの指針に従って意欲的にプロジェクトを進めている。この経験を糧に最終学年を迎え、その後どんな未来に突き進んでいくことになるのだろうか。これからが楽しみだ。

(文中敬称略)

本連載が書籍になりました!

 日本初の試みとなる、全寮制インターナショナルスクールの開校。約4年にわたって、その軌跡を追ってきた本コラム「軽井沢にアジアのための全寮制高校を作ります!」が書籍になりました。

 「少数の強いリーダーが全体を引っ張っていくような米国型のリーダーシップのモデル以外にも、日本らしさやアジアらしさを生かした多様なリーダーシップのモデルがもっと意識されてもいいと思うのです」(小林りん)。そのために、ダイバーシティーの環境に身を置いて、リーダーシップを養う教育の場を用意したい。

 そんな思いから始まったプロジェクト。しかし、そもそもどうやって学校を作ればいいのか。ゼロからの取り組みが結実するまでの奮闘を描いています。