「大切なことは、メッセージを伝え続けることだと思います。人の生活習慣を変えるのは、ものすごくたいへんです。でも、今回のプロジェクトウィークでエクササイズの楽しさが再発見できたので、この体験をまた皆にシェアできるというメンバーのモチベーションが高まったのを感じています」(トーマス)

 今度の夏には、オンラインヘルスケアサービス「ダイエット家庭教師」などを手がけるFiNC(東京・千代田)に、プロジェクトのメンバーがインターンとして受け入れてもらえることになっているという。

SNSで呼び掛けた他校との取り組み

 東京に来たもう1つのグループが、日本が内包する問題に目を向けたプロジェクト「HEAR(Harmony for East Asian Relationships)」だ。東アジア、特に日本と中国、また日本と韓国との関係について、その協調を学生のレベルから実現していくことを目的に立ち上がった。

 このプロジェクトを立ち上げたのは、日本人男子生徒のナオキとタイリだ。ナオキは、アメリカに留学していた際、現地では中国人や韓国人の友人も多く、いい関係を築いていた。そんな経験から、「なぜ国同士になるとうまくいかないのか」と疑問を抱いていた。一方、タイリはシンガポールに留学していたことがあり、中国人が多い学校で差別的な扱いを受けた経験があるのだという。そこで、課題として取り組むようになった。

 しかし、広範なテーマだけに、扱いが難しい。当初は東アジアの歴史問題について議論を進めていくつもりだった。しかし、日本に住んでいる中国人や韓国人、中国人や韓国人の伴侶を持つ日本人などたくさんの人にインタビューして調べていくうちに、歴史だけでなく、経済や政治など、あらゆる問題が最終的にたどり着くのは“感情”ではないかという視点が生まれた。

 日本人男子生徒のコウスケも、途中からプロジェクトメンバーに加わった。「日中、日韓というと、よく『文化交流をしよう』ってプロジェクトがありますよね。でも僕は、それは少し違うのではないかと思っているんです」というコウスケは、最近したインタビューでとても興味深い話を聞いたと教えてくれた。中国出身でアメリカ国籍を持つというその人物は、こんなことを語ったそうだ。

 「人間の心の中には“スイッチ”があって、それが押されると考え方がころっと変わる。いい例が、多くの人々のスイッチを押したマーティン・ルーサー・キング・ジュニアだろう。このスイッチの切り替わり方には2つあって、考え方が変わって新たに考え始めるのか、それともただトレンドが悪いものから良いものに変わっだけなのか、そのどちらかだ」

 彼の考えをインタビューで聞くうちに、コウスケは自分の中でもさらに考えを深めたようである。

 「『文化交流をしよう』は、どちらかと言えば後者のトレンドのほうのスイッチで、悪い感情から良い感情に変えようということですよね。それは、考え始めるきっかけにはなるかもしれませんが、本質的な問題にどれだけ効果があるのかは疑問です。尖閣諸島に対して日本人の99%が同じ考えで韓国人の99%がまた同じ考えなら、それは言ってしまえば『何も考えていない』ということの裏返しなんです」

 「歴史的な問題、文化的な問題、いろいろありますが、結局その根源には一人ひとりの感情があります。そこに対して『何か違うのではないか』『自分たちは攻撃的になっていたのではないか』と、それぞれに自覚してもらうことができたら、こうした問題も少しずつ緩和されていくのではないでしょうか」

「口論」と「議論」の違いを知ってもらう

 プロジェクトメンバーとしては、現在5人の日本人学生が参加している。プロジェクトウィークで、彼らは日本で学ぶ他校の中高校生にもフェイスブックなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて呼びかけ、東京でワークショップを開催した。