「コミュニケーションというのは、常に“五分五分”です。事が進まないとしたら、一方にだけ非があることは絶対にないと私は思う。私たち学校側にも50%の改善点があるかもしれない。でも、あなたたちの普段の行動や言い方に、何か聞いてもらえない理由を作っているということはない? 人に何かを聞いてもらえる人の行動というのはどんなものか、もう一度よく考えてみて」

 小林からそんなふうに投げかけられた生徒は、「分かりました」といったんは帰っていった。本当に納得したのか――。生徒は、小林が想像していた以上の“行動”を起こしたのである。

 まずは「自分たち以外の生徒全体が、どう感じているか」を示すために、調査を開始した。全生徒にアンケートをとり、98人中96人の回答を得て関心が高いトピックであることを浮き彫りにした。さらに、データ分析ツールを利用しながら図やグラフを作って資料をまとめ、校長と小林の前でプレゼンテーションを行った。

生徒は、全生徒が校則をどのように感じているかについて調査した結果を、校長らにプレゼンした
生徒は、全生徒が校則をどのように感じているかについて調査した結果を、校長らにプレゼンした

 そこから、学校全体を巻き込む話し合いが始まった。最初は「校則のここがおかしい!」「この決まりを変えてほしい!」という話だったが、「もっと問題の根本を考えよう」という方向に議論は深まっていく。「生徒全員がリーダーシップをとるには、持ち回りで生徒会を作ったほうがいいのではないか」「学校の理事会や評議委員会の席を生徒にももらえないだろうか」なんて意見まで出てきたほどだ。

 こうした話し合いの場を、校長はじめ教員たちも、辛抱強く見守る。彼らは、ISAKの「チェンジメーカーを育てる」というミッションに深く共感し、これを学校生活、授業のなかで実践しようと尽力する一方で、生徒たちの安全、健康も守らなければならない。そのジレンマのなかで、日々生徒たちと向き合っているのだ。

 生徒たちの提案は最終的に理事会へ提議され、満場一致で生徒の自治を応援することが決まった。生徒の安全に関わることや、日本の法律に抵触すること、また学校に大幅な財政負担がかかるようなことでなければ、できる限り生徒たちに議論しながら決めてもらおう、というわけだ。

 改革は、そう簡単に起こせるものではない。だが、意思があれば道は拓けるということを、生徒たちは実践を通じて感じ取っているに違いない。

募金活動を申し出た生徒にダメ出し!?

 小林は、そんな生徒の姿を頼もしく見ているようだ。「開校から1年半経って一番良かったと思う点は、生徒が私やロッド(校長)と同じくらいかそれ以上に、学校のミッションに対して真剣に取り組んでいる姿勢が感じられることです」。

 生徒の志の高さは、ISAKで学ぶカリキュラムとも無関係ではない。全人教育を教育理念とする国際バカロレアディプロマプログラムを軸としているISAKでは、1年生から学校生活のあらゆる場面でリーダーシップを学ぶ。人のニーズを中心に課題を発見して周囲を巻き込んで変革を起こすためのスキルを磨く「デザインイノベーション」、自己・他者理解を深めてあらゆる場面で本質的に大切なことを見極めるための力を養う「マインドフルネス」を、カリキュラムに取り入れている。

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