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家族やコミュニティーは、これからどうあるべきなのでしょうか。

坂東:私は、「命をつなぐ」「命のリレー」という、生き物が本来持っているであろう本能を大切にすべきだと思っています。動物園でなぜ私たちが繁殖を目指すのかというと、それはその動物が例えば絶滅危惧種であるなどといった理由ではなく、動物たちに「あなたたちが生きている環境は、次世代をつなぐ場所である」という認識を持たせるためなんです。動物園なんて、しょせん人間のエゴで作った場所に生き物を閉じ込めているわけですけれども、そのような場所でもちゃんと子育てをして次世代につないでくれれば、このような閉鎖環境でも、自分の生きる場所だって認めてくれた結果だと思っています。だから私たちは、繁殖を目指すのです。

 そういう意味でいうと、今、子どもを産むことが不安で仕方ないと思う人が多いということは、今私たちがいるこの環境が、もう要するに次世代につなぐ場所として適切でないということですよね。だから人間の本能的な部分においても、産もうとしないのではないですか。私はもう、そんなところまで、今の日本の社会は来ちゃっている気がします。

「会社で子育て」のすすめ

産みたくても、女性が子育ての負担をほとんど背負わなければいけない不安も大きな要因です。

坂東:生んじゃえば、何かしら周囲が支えてくれるといった希望のようなものがないですからね。だって、女性でも家族3人くらい養える給料を1人で稼げる人が増えているというのに、子供が増えていない。本当に生活力のある人が産んでいないのが問題です。

 極端な話、会社をもっとうまく使えばいいんじゃないかなと思っています。会社は、地域社会とは違ってまだ組織としてのコミュニティーが機能しています。働く女性が子供をおんぶして出社してきたら、10分ずつ交代で周囲の男性社員に子守をさせるとか、そういうのがあってもいいのではないでしょうか。だって、8時間なり9時間、1分も休まずに働いている人なんていないでしょう。皆で子守をしながら働く会社があってもいいはずです。このアイディアは実現できると思いますよ。子供がいろんなタイプの大人と触れ合えるメリットもありますし、働いている側もギスギスしないのではないですか。

 今、自分がいる地域の中やマンションの中で、コミュニティーを作り直しましょうなんて、無理でしょう。だったら、まだコミュニティーが残っている会社の方がいい。価値観を変える余地はあると思います。人間は一人で全部完結できるほど、強い生き物ではありません。特に子育てというのは、何か支えがあってというか、いろんなかかわりがある中ではじめてできることだと思います。

 それにきっと、人と様々なかかわりを持つ過程で自分にとって関係ないものや、共存できない存在も出てくるでしょう。それに価値を見出したり、認め合う感性を育むことが、「個の時代」から抜け出すために必要不可欠な要素です。今の社会は、どんどんお互いを認め合えなくなってきている。

 人間同士でうまくいかなかったら、生き物や周囲の環境とも折り合いをつけることができなくなると思いますよ。残念なことに、私たちの技術や科学が発展すればするほど、地球上の生き物の中で絶滅していく種が増えていく。環境問題だって全部同じ論理です。自分に都合よく生きるのではなく、都合の悪いものも含めて、一緒に生きていこうという感性が戻ってくれば、「家族の在り方」を含めて、もう少しこの社会の姿も変わってくるのではないでしょうか。