「人の役に立つ自分でいたい」という思いも

 「家族」よりも「自分」を優先するというと、自分勝手なようにとらえられがちだが、家族として互いを認め合い、尊重することも重視しており、かならずしも自己の都合ばかりを考えているわけではない。

 調査インタビューや大学生との共同研究で若者と接することも多い宮川氏は「特に若者は『人の役に立つ存在でいたい』『一緒にいて楽しい人と思われたい』という傾向があるようだ。そのためには、『弱音を吐いたり、余裕がない状態だったりすると、人のためにという気になれない』『まずは自分がご機嫌でいないと』など、周囲への気遣いから、自分を優先する気持ちもあるのでは」と分析する。

 特にSNSなどでは、不特定多数の眼に触れることから、実態以上に楽しく見栄えのいい話題を取り上げる傾向もある。自分を優先しながらも、人に本音をさらすのは難しい面もあると言えそうだ。

生活満足度は高いが不安は強まる

(グラフ6)現在の生活に満足している
(グラフ7)自分の将来に不安を感じる

 花王の調査には、「現在の生活に満足している」(グラフ6)という設問もある。それに対して「そう思う」「ややそう思う」という肯定的な回答は既婚女性は06年の70%から16年は69%、既婚男性は58%から63%とやや高めの水準にあった。だが「自分の将来に不安を感じる」(グラフ7)という設問については、「そう思う」「ややそう思う」という回答が10年で既婚女性が7ポイント、既婚男性は9ポイントアップした。

 宮川さんは「生活満足度は高いが、不安は増している、という裏腹な結果になっている。この結果から、今の社会はこういう状況だ、という明確なメッセージを出すのは難しい」と話す。

困窮世帯増加が予測される現実も

 多くの人がうっすらと抱える不安。昨年末、こうした不安を現実に感じさせる報告があった。

 15年に作られた厚生労働省の生活困窮者自立支援制度。生活保護受給者が200万人を超える状況の中で、保護にはいたらないまでも生活に問題を抱える層に対し、就労など自立を支援するために生まれた制度だ。

 制度発足以来、支援を求めてきた生活困窮者の相談は45万件に及ぶ。昨年12月11日付けの報告書を見ると、相談者の内訳では、40-50代男性が2割を占めていた。従来、社会を支えると考えられていた層だ。また50代以下の子育て家庭からの相談も3割に上った。高齢者を支える家族、次世代を育てる家族が問題を抱えている実態が明らかになった。さらに報告書は、今後は社会の変容に伴い、困窮者支援のニーズはますます、大きくなると指摘する。

 2035年の日本では、3人に1人の男性が、女性も4人に1人が生涯独身で過ごす―。国立社会保障・人口問題研究所はそんな予測データを公表している。生涯独身というのは50歳時点で結婚していない人を指す。つまり現在33歳の男女の将来ということになる。

 また世帯当たりの平均人員も年々減少が続く。2035年の予測値は2.2人。離別・死別を含め、全世帯の4割近くを単身者世帯が占めると見られている。