最終消費者を見ていない不祥事企業

多くの人の口に入る食品と、機械などに加工される素材や部品では、扱いが違うという意見もあります。

久保利:BtoBの商品で、取引先が納得しているなら問題ないって言うんでしょう。これも大きな間違いですよ。素材だって部品だって最後の段階では、必ずBtoCのビジネスになるんです。誰が飛行機に乗り、誰が自動車を買うのですか。神戸製鋼や三菱マテリアルが受け取るお金は、究極的には誰が支払っているのですか。多くの一般消費者でしょう。

 ところが、問題を起こした企業にはこうした意識が欠けている。取引先の了解を得ることを最優先にして、視線がその先に向いていないのです。だから動きが極めて遅い。

 神戸製鋼がデータ改ざんを把握したのは2017年の8月頃とされていますが、公表したのは10月になってから。食品メーカーだったら、問題を起こした商品を3日で回収しなかったらボコボコにされますよ。BtoBの製造業だから許されると考えるのは甘い考えでしょう。

一連のデータ改ざんで浮き彫りとなったのが、トクサイ(特別採用)と呼ばれる日本独自の商慣習でした。要求に満たない品質の製品を、取引先の許可を得たうえで納入する仕組みです。

久保利:これにも非常にがっかりさせられましたね。納期を守るために、契約と異なる品質の製品を出荷していたんでしょう。まともな製造業なら、絶対に品質を犠牲にしないはず。相手が認めたとしても、自らの矜恃が許さない。

 しかも一部ではトクサイという慣習を悪用し、相手の承諾を得ないまま不適格な製品を納入したケースすらあります。「過剰品質」と言われるほど安全面を考慮しているので、多少なら許容されるだろうと考えているのでしょうが、それは何の言い訳にもなりません。製造業としての「堕落」だと言うべきです。

トクサイは一部のメーカーに限らず、日本の製造業ではよく使われる取引手法です。

久保利:ある企業で、トクサイの有無や社内稟議のプロセスを調べたそうです。すると幸いなことに、ここ数年間ではやっていないことが分かりました。ただし、それ以前は不明です。記録が存在しないため遡れないというのです。

 担当者はこう話したそうです。「トクサイは相手が認めなければ実現しない。製品として使われて長い時間が経っているし、事故らしい事故も起きていないから、大丈夫じゃないですか」。