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クレイトン・コールマン氏はクーバネテス開発に多大な貢献をした人物としてコミュニティで知られる(写真:David Kennedy)

 このようにコミュニティは厳しい世界だが、参加するエンジニアにとっては大きな利点がある。

 「最近はGitHubが履歴書」。そうライトCTOが語るように、オープンソース・ソフトウェアの世界ではコードでの貢献が可視化されるため、自分の能力が業界中に知れ渡る。また、プロジェクトの価値がすぐに評価されるという面もある。

 「コミュニティがいいのは、自分が解決しようと思っている問題が本当に重要なのかが明白になるところだ。オープンソースにして肯定的なフィードバックがたくさん来れば、それは社会的に重要なプロジェクトということだ」

 パリス氏やコールマン氏と同様に、クーバネテスの中核コードやコンセプト作りに関わったデリク・カー氏は指摘する。自分の提案が優れていれば世界中の才能が手を貸してくれるが、魅力がなければスルーされて終わり。その明瞭さが魅力だという。

 さらに、技術の最先端に触れられることも大きい。クーバネテスのようなソフトウェアはビジネスのあり方を根本的に変えている。その変化に直接関われるという喜びがエンジニアを惹きつけているのだ。「クーバネテスには多くのエンジニアが関わっている。彼らは履歴書のためだけではなく、根本的な技術の変化に関与できるために参加している」(パリス氏)。

クーバネテスの中核コードやコンセプト作りに関わったデリク・カー氏(写真:David Kennedy)

「意見がないのはダメな意見よりも最悪」

 なぜレッドハットがコミュニティとの対話に長けた企業になったのか。それは、同社がそもそもコミュニティの中から生まれた会社だったからだ。

 レッドハットはリナックスのコミュニティで貢献していたエンジニアが1993年に立ち上げた。その後、消費者向けリナックス製品で成長し、一時はOSを支配するマイクロソフトに対する挑戦者と位置づけられたこともあった。

 だが、1999年の上場後、100ドルを超えた株価はITバブルの崩壊で数ドルに急落、冬の時代に突入する。この苦境の中で、当時の経営陣は企業向け製品に特化することを決断、リナックスを使いこなせない利用者にサブスクリプションでサポートを提供するというモデルに転換した。