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コミュニティ活用の巧みさがレッドハットの強み

 レッドハットは、このオープンソース・コミュニティと共存することで急成長してきた。

 同社の製品はすべて、ソースコードが公開されているオープンソース・ソフトウェアを使ったもの。ただ、オープンソース・ソフトウェアはバグの修正や機能改善がしばしばあり、精通した人材がいないと使いこなせない。その中でレッドハットは年間のサブスクリプション(定額制)で更新対応などをサポートするというビジネスモデルを作りあげた。

 2018年第3四半期(2018年9月~11月期)の売上高は8億4700万ドルと前年同期比13%増、営業利益は前年同期比で8%下がったが、1億900万ドルを確保した。企業向けリナックス製品に舵を切った2002年以降、67四半期連続の増収を続けている。

 先述したように、レッドハットの製品はコミュニティで開発されたものだ。オープンソース・ソフトウェアの開発は通常、エンジニアや企業がプロジェクトをGitHubなどに立ち上げ、賛同した人々がコード作成などを分担する。完成したソースコードは公開され、自由に使用される。フィンランド出身のリーナス・トーバルズ氏が開発し、無数のエンジニアが参加したリナックスは最たる例だ。

 レッドハットは、このコミュニティの活用が抜群にうまい。

 例えば、レッドハットとして対応が必要な技術があった場合、自社で10人のエンジニアを出して開発するのではなく、同じようなサービスを必要としている企業に声をかけてコミュニティを作る。開発のために割り当てる人材が少なくて済むようにするためだ。「レッドハットの開発は『顧客を探せ』というところから始まる」とレッドハットのジム・ホワイトハーストCEO(最高経営責任者)は語る。

 コミュニティはレッドハットが主導的に立ち上げる場合もあるが、他社が進めるコミュニティに自社のエンジニアを参加させることも多い。誰でも使える無料の原材料に対して外部のリソースを活用して製品に仕立て上げている企業は世界広しといえどもほとんどない。IBMはその力を評価しているからこそ、340億ドルという破格の価値を付けたのだ。

 レッドハットがコミュニティにどう関わっているのか、Kubernetes(クーバネテス)を通して一端を覗いてみよう。

 スマホアプリを見ても分かるように、企業がサービスをリリースするサイクルはどんどん短くなっている。こういった開発とローンチの高回転に対応するため、従来のサーバー型の仮想化ではなく、よりシンプルで軽量な「コンテナ」という仮想化技術を選択する企業は増えつつある。その一方で、運用するコンテナの数が増加し、管理が複雑になるという問題も浮上している。

グーグル発の技術も磨き上げる

 こうした課題を解決するために登場したのが、コンテナを管理・運用するソフトウェア、クーバネテスだ。この技術によって、アプリをすぐに利用できるようにしたり、状況に応じて能力を増やしたり、といったことが可能になる。もともとは米グーグルが開発したテクノロジーだが、オープンソース化した2014年以降、ビジネス用チャットのスラックにおける登録者が4万人を超える巨大コミュニティに成長した。

 レッドハットはオープン化された当初からクーバネテスの開発に関わり、発展に寄与している。2015年には、クーバネテスを活用した企業向けコンテナサービス、Red Hat OpenShiftを上市した。クーバネテスに対する貢献度ではグーグルに比肩する存在だ。

 「オープンソース・ソフトウェアになってからの3年間でコードの90%が書き換わった。新しい機能の追加や安定性の改善、拡張性など相当量の活動があったことを意味している。コミュニティのおかげでクーバネテスが改善されたことに疑問の余地はない」(ライトCTO)。

 オープンソース化される前にグーグルから相談を受けたレッドハットはクーバネテスの将来性を高く評価、一線級のエンジニアを投入した。現在はOpenShiftの共同テクニカルリーダーを務めるエリック・パリス氏は、エンジニアとしてクーバネテスの基本部分のすべてに関与した。