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急成長する民泊仲介の米エアビーアンドビーのウェブサイト。同社はAIの活用と社員の教育を並行して進めている

 家賃の支払いに困った創業者のブライアン・チェスキーCEO(最高経営責任者)とジョー・ゲビアCPO(最高プロダクト責任者)が国際デザインカンファレンスの際に自宅アパートのロフトを貸し出したという創業の経緯は広く知られている。その後、紆余曲折があったが、スタートアップ養成の“虎の穴”として知られるYコンビネーターに潜り込み、成功のきっかけをつかんだ。今では310億ドルの企業価値が付く屈指のユニコーン企業(企業価値10億ドル以上のスタートアップ企業を指す言葉)である。

 実は、エアビーはシリコンバレーのテック企業の中でも、特にデータやAIを積極的に活用していることで知られている。同社のデータサイエンスチームには160人のデータサイエンティストが所属しており、ビジネスの最適化や自動化のため、日々の業務の様々なところにデータとアルゴリズムを活用している。

 例えば、貸し主向け広告だ。

 空き部屋をユーザーに貸すというビジネスモデルのエアビーにとって、貸し主を増やしていくことはすなわち成功の源泉である。配車サービスの米ウーバー・テクノロジーズが新規ドライバーを開拓するのと同様だ。そのため、エアビーはフェイスブックやグーグル、インスタグラムなど様々なプラットフォームに貸し主向けの広告を出している。その広告の評価や予算配分にアルゴリズムを活用しているのだ。

160人のデータサイエンティストが所属

 通常、空き部屋を貸そうと思う所有者の中には様々な広告を見てエアビーのサイトに飛ぶ人も少なくない。そこでユーザーが貸し出す部屋のタイプや立地、広さ、アメニティ、貸し出し可能日数などの情報を入力していくと、エアビーで貸した場合、最終的にどのくらいの収益が得られるかというLTV(生涯価値)が分かる。エアビーはこのLTVのデータを元に、それぞれの広告プラットフォームに対する最適な入札額を算出、予算を割り当てる。

 貸し主は複数の広告を見てエアビーのサイトに辿り着く場合もあるため、それぞれの広告がエアビーのサイトに辿り着くのにどれだけ貢献したかも考慮に入れる(マルチタッチ・アトリビューション)。そもそものLTVも機械学習のアルゴリズムの一つ、XGBoostを用いて予測精度を向上させている。各都市の膨大な部屋データに基づいて広告価値を算出しているということだ。

 広告の入札や予算の最適化、広告キーワードの決定など広告にまつわる業務は人間の仕事だったが、エアビーではAIに置き換わり始めた。この動きは広告だけではなく、検索ランキングや宿泊費の価格設定、アカウントの乗っ取りや入金取り消しといった不正行為の検知、カスタマーエクスペリエンスの改善や従業員の給与設定など、様々な領域で起きている。

 「それぞれの部署にデータサイエンティストがいるからこそ、人事からマーケティングまで様々な業務でデータやアルゴリズムを活用することが可能になっている」。データサイエンス部門のディレクター、エレナ・グリーワル氏は語る。