効率化、ルール化された組織体質が改革の大敵

 ダイバーシティーが、なぜ両利きの経営に貢献するのか。
 企業には、放っておくと効率化の方向に走っていくという「本能」がある。また、あるビジネスを追求していくと、そのビジネスに合ったように文化ができあがっていく。その結果、ルール(投資や評価の制度など)が固定化される方向に走っていく。

 たとえば、マイクロソフトでパッケージソフトを法人向けに売って、何年かたってバージョンアップして稼いでいくというビジネスモデルが確立していくと、文化もそれに合ったものになり、ルールが形成されていく。

 ところがそのモデルがやがて通用しなくなる。同時に、それとは矛盾するような新事業を始めないと成長できなくなる。この時必要になるのが、両利きの経営だ。

 新事業のほうを育てる、あるいはマイクロソフトのように既存事業と新事業を融合させる世界をつくろうとした時には、異分子の存在が欠かせない。なぜなら、文化やルールが効率化され、固定化してしまっているからだ。違う経歴、違う視点、マインドセット、違う文化を持った人材を入れて、「効率化」「統一化」されてしまった古い文化やマインドセットをリフレッシュしないと、両利き経営はうまくいかない。

 本連載の第1回で述べた「傍流」の意義もここにある。傍流というのは、本流に比べて、組織のメーンの文化からは少し隔離されている、あるいは、本流に対する批判者の性質がある。だからこそ、組織を揺さぶる力があるのだと思う。

変革に必要なダイナミック・ケイパビリティー

 経営学にはダイナミック・ケイパビリティー(DC)という概念がある。DCとは、企業を変革させる能力のことだ。上述したように、企業は事業に合わせてルールや文化をつくりあげていく。しかし、肝心の事業が変化するためには、そのルールや文化が制約になってしまうのである。この制約を突破し、資源の組み換えやルール・文化の変革を促す力がダイナミック・ケイパビリティーだ。

 ダイナミック・ケイパビリティーは、組織が持つという議論と個人(経営者)が持つという議論がある。マイクロソフトは組織として高いDCを持つ企業だったからこそ、「追い上げ戦略」を何度も成功させることができたのであろう。しかし、コンセプト、ケイパビリティー、カルチャーの3つを全部組み替えていくためには、高いダイナミック・ケイパビリティーを持った経営者が必要だ。

 たとえば、ハウステンボスは、澤田秀雄さんという一人の経営者(外部から来た経営者)がその経営を引き受けることで大きく変貌した。マイクロソフトは、傍流からの内部昇進の過程で高いダイナミック・ケイパビリティーを備えたナデラを経営者に据えたことで変革に成功しつつあると考えられる。