料理動画に押され気味のクックパッド

 両利き経営は、簡単ではない。マイクロソフトほどではないにしても、ある分野で高いシェアを持つ強い会社にとっては、両利きで経営していくのは骨の折れる作業だ。

 たとえば、料理レシピ検索・投稿サービスのクックパッドは、最近、kurashiru[クラシル](運営会社はdely)などの料理動画(レシピ動画)に押されている。クックパッドもこれを追いかける形でクックパッド料理動画を始めたが、既存の料理レシピ検索と料理動画の事業には、大きな矛盾がある。

 クックパッドは利用者からの投稿で成り立っているサービスだ。一方、kurashiruは利用者の投稿ではなく、自分たちで(つまりプロが)動画をつくっている。動画の制作というのは、ユーチューバーみたいなセミプロがいるものの、一般の消費者が見やすくてクオリティーの高い動画をつくることは、現時点では期待できない。たとえば、kurashiruでは調理時間15分の料理動画を早送りと文字の挿入をうまく使って30秒で見られるように制作している。素人ではなかなか真似できないつくり方だ。クックパッドはこれまで、投稿する人の自己実現欲求を刺激し、投稿数で勝負してきたが、クオリティーが求められる動画では、その方式が通用しない可能性が高い。

 kurashiruを運営するdelyなど、新しいスタートアップは、専業だからこそ強い。一方でクックパッドは、右手に既存のレシピサイトがあり、左手で料理動画を始めたところだ。動画対応が遅れたように見えるが、両者の矛盾の存在を考えると、遅れて当然の面もある。

 新しいアイデアに基づく事業は、最初は儲からないことが多い。そのうえ、新しい事業が既存事業と矛盾している場合には、全力では取り組めない。新しい事業が全部うまくいくわけでもない。クックパッドがどのくらい本気で料理動画に取り組んでいるかはわからないが、両利き経営のマネジメントが求められることは間違いない(同社は、ユーザーが無料で料理動画を撮影・投稿できるスタジオを2017年12月に開設。今後は「ユーザーに動画を制作・投稿してもらう」方向へシフトすることを発表した。これは、既存資産を活かす方法だが、ユーザー参加型動画制作がうまくいくかどうかはわからない)。