脱・創業系がリフレッシュの絶好の機会に

 ただし、マイクロソフトの場合、2014年にCEOがスティーブ・バルマーからサティア・ナデラに交代する直前、社内では「マイクロソフトはこのままダメになっていくのではないか」という雰囲気が漂い、士気は大幅に低下していたと言われる。

 ナデラ自身、『Hit Refresh』の中で、次のように述べている。

 「ライバル企業に先を行かれてもすぐに追いつけるという過信がどこかにあり、そのような戦略に危険が内在することに気づかなかった。マイクロソフトはおそらく、大成功を収めた自社の事業モデルを壊すことに抵抗を感じたのだろう。(中略)企業は、自社だけができることについて完璧なビジョンを持ち、持てる力と強い信念でその実現を支えていくしかない」と述懐している。(『Hit Refresh』chapter 6より)

 いかに歴史的に追い上げ戦略が得意でも、その戦略を実行する力が低下していては、いかんともしがたい。その意味では、経営者が交代して、リフレッシュすべき時だったのかもしれない。スティーブ・バルマーはマイクロソフトの創業期からビル・ゲイツの右腕として、パソコン革命を推進してきたいわば「創業系」の系譜にある人物だ。バルマーは2000年から14年間、CEOを務めた。対して、ナデラはサラリーマン経営者であり、2014年のCEO交代は、創業系経営者から非創業系経営者への交代という意味を持ち、バルマーはナデラが手腕を存分に発揮できるように、マイクロソフトから完全に去った。つまり、過去のしがらみを裁ち切り、停滞した組織文化をリフレッシュするには、非創業系経営者への交代が必要だったのである。そのことをゲイツもバルマーも知っていた。

(次回に続く)

サティア・ナデラ Satya Nadella
マイクロソフトの最高経営責任者(CEO)。40年あまりの歴史を持つ同社の第3代CEO。情報科学の修士号取得のため、21歳の誕生日にインドのハイデラバードから渡米。アメリカ中西部やシリコンバレーでの経験を経て、1992年にマイクロソフトに入社。以後、同社のコンシューマー、エンタープライズ両部門で、さまざまな製品やイノベーションを主導する。マイクロソフトでの役職に加え、フレッド・ハッチンソンがん研究センターの評議員、スターバックスの取締役も務めている。また、妻のアヌとともに、シアトル小児病院や、シアトルにある障害者ら向け施設を個人的に支援している。Photo©Microsoft
マイクロソフトCEOであるサティア・ナデラの初の著書。過去に大成功したゆえ、守勢に回り、モバイル化とクラウド化の波に乗り遅れたマイクロソフトをいかに立て直したかが、現役CEOの本音とともに赤裸々に描かれている。