ハイブリッド型で既存事業との両立を図る

 過去の財産を生かして新しい事業に取り組んでいるという点では、クラウドサービスのMicrosoft Azureも同様だ。

 Office 365と違ってAzureは、技術的にはゼロからつくったと言われている。しかし、Azureビジネスの訴求においては、マイクロソフトは、クラウドへの全面切り替えではなく、専用サーバーを使ったシステムとのハイブリッド運用を当初強調した。こうすれば、ユーザー企業は、新システムをAzure(パブリッククラウド)上に構築すると同時に、既存のシステムを自社専用サーバーで、同時にそのまま使うことができる。つまり、ユーザーは、クラウドへの全面転換を一度にしないでシステム運用できる。マイクロソフト側から見ると、従来のWindows サーバーのパッケージとしてのビジネスを捨てずに、同時にAzureの拡大を図ることができる。

 このやり方は、サーバー型ソフトウェアを持っていないアマゾンのAWS(クラウドのシステム基盤のビジネス)には真似できない。マイクロソフトは何もないところから追い上げているのではなく、自分の財産を上手に使いながら「両利きの経営」を実践して、先行する企業を追い上げたのだ。

恐るべきスピードで先行企業を追い上げ

 ただし、「両利き経営」は簡単ではない。特に、過去に成功している会社ほど、新しい技術への乗り換えは難しい。マイクロソフトのように大成功を収めた企業なら当然乗り換えの難易度も上がるはずだが、実際には恐るべきスピードで、先行企業に追いついている。ここが同社の優れているところだ(下図参照)。

 先発のAWSのサービス開始は2006年、本格的に事業がスタートしたのは2007年だった。マイクロソフトは2008年にはクラウドサービスの提供を発表し、わずか2年後の2010年1月にサービスを提供開始している。Surfaceの発売もiPadの発売から1年半しかたっていない。

 Office 365の場合、Google Appsが出てくるのは2006年8月だが、Office 365の前身のOffice Web Appsの提供開始は2010年6月。約4年かかっているが、Officeは、Google Appsよりも機能がかなり多いソフトであったことを考えると、十分早いといえよう。

 ソフトの開発には通常2、3年は要するだろうから、これらの事実は、先行企業が新しいサービスを開始した時には、マイクロソフトもそれを事業化するかどうかについて判断していることを示している。同社は、技術のトレンドを読み、自社で手がけるかどうかを判断するのが早くて上手な企業だとも言えよう。