地方に住む友人が遊びに来ると、東京暮らしの不便さの象徴として、私が必ずや見せるものがある。うちに一番近い都バスのバス停にある時刻表だ。自分も見るたびに驚くのだが、これがもうスッカスカとも言えないくらいスッカスカな代物で。バスが来るのは1~2時間に1本程度。終バスなんて、なんと午後4時台という早仕舞いとなっている。

本数が減れば、乗る人も減るのがつね。ここのバス路線も、本数減る→乗客減る→さらに本数減る、というスパイラルに。まあ、マリー・アントワネットなら「バスがなければ、プライベートジェットに乗ればいいじゃない」とか言うだろうが、こっちはグンと庶民的に「バスがなければ、地下鉄に乗ればいいじゃない」ということだと思う。
確かに周辺には地下鉄の駅があるけれど、今どきのバスは運行状況が分かるアプリもあるし、ついでに都心の道はバブルの頃より空いている。長いエスカレーターを乗り継いでホームまで降り、また到着駅で長いエスカレーターで地上へ、みたいに縦の移動もばかにならない地下鉄より、バスのほうが早く着く場合もある。大事な足なのだ。
それより何より、バスは外が見えるのがいい気分。せっかく家の近くにバス停があるのに、時刻表がスッカスカって、「幸い中の不幸」ってこれだと思う。だからといって高度成長期じゃあるまいし、少子化で行政サービスも縮小の一途。この先、交通の便が悪くなることはあっても、よくなることがあるとは思ってもいなかった。
ところがだ。数年前から東京都心に、ある画期的な交通手段が彗星のように登場した。「自転車シェアリング」だ。簡単にいうと「レンタサイクル」みたいなものだが、昭和の人が憧れた、避暑地で彼氏と湖畔をサイクリング、みたいなあれとは別物となっている。
自転車シェアリングは、各所にあるポートと呼ばれる自転車置き場なら、どこで借りても、どこで返してもOK。「ドコモ・バイクシェア」が運営し、官民一体で手がけている東京の自転車シェアリングでは、2012年4月に江東区でスタートしたのを皮切りに、16年には港区、中央区など4区で相互乗り入れが可能に。この4月に品川区と大田区が加わり、現在都内9区という広範囲で、借りたり返したりが可能となっている。
それも、このドコモ・バイクシェアが手がける、いわゆる「赤チャリ」、スマホで登録、決済、施錠、開錠などができるハイテク自転車。山手線の中の多くをカバーする9区に乗り入れ可能となったのをきっかけに、1カ月赤チャリ使い倒し生活を試みてみた。
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