「うちのおばあちゃんはタバコ吸う。うちのおばあちゃんはタバコ吸う…」

 まだ20世紀だった頃、シアトルのダウンタウンでのこと。喫煙が許されていたカフェの外の席でタバコを吸っていると、家族とバスを待っていた5歳くらいの女の子が寄ってきて、英語でそう呪文のように唱え始めた。

 「ごめん、タバコはよくないね?」
あわててタバコを消したのだが、彼女はまだ言う。
「うちのおばあちゃんはタバコ吸う。うちのおばあちゃんはタバコ吸う…」
呪文はやがて即興のメロディまで付いて、いい調子に。
「♪うちのおばあちゃんはタバコ吸う…」

 なんだ?この子。日本なら、座敷わらしを真っ先に疑うが、ここはアメリカだし。
「おばあちゃんっていくつ?」
「おばあちゃんはどこに住んでいるの?」
なんとかして話をそらそうと質問攻めにしてみるが、
「うーん、分かんない。♪うちのおばあちゃんはタバコ吸う、うちのおばあちゃんはタバコ吸う…」。

アメリカでは20世紀末、スモーカーは少数派に

 そうして彼女は5分ほど「うちのおばあちゃんはタバコ吸うソング」を歌い上げたのち、やっと来たバスに手を振って乗り込んでいった。アメリカではすでにタバコを吸う人が珍しくなっていた時代。最初はタバコを吸っているだけで、彼女のおばあちゃんと同じ、秘密結社のメンバーか何かと思ったのだろう。

 それがいつのまにか言葉遊びになって、どうにも止まらない状態に。ピコ太郎の「アッポーペン」みたいなもので、口に出して繰り返しているうちに面白くなって、意味もなく繰り返すっていう、子どものころよくやったアレだと思う。

 ちなみに子どもの声っていうのは、聞かされるほうも妙に頭にこびりつく。子役の寺田心くんのCMのセリフ「ひどいトイレだ…」とか、フジテレビの情報番組「とくダネ!」のオープニングで、子どもの声が合唱する「とくダネです!」とか、あとそうそう、森友学園が運営する幼稚園の運動会での選手宣誓「安倍総理がんばれ」なんかも。

 しかもリピートされれば、なおさらだ。子どもの間で、あの選手宣誓をまねする「森友学園ごっこ」がはやっているというニュースがあったけど、子どもじゃない自分だって、あれだけ繰り返しテレビで聞かされた結果、うっかり「安保法制国会通過よかったです」とか、一人つぶやいていることがあるもの。