「2人とかけて、夫婦茶碗ととく。そのこころは、どちらも欠けてはなりません」

 こちら、どっかの結婚式で思い切りスベった、親戚のおじさんの祝辞ではない。そしてこのベタなネタを聞いて、キャハキャハと大笑いしている妻も、決して林家パー子ではない。

 これはNHKの朝ドラ「わろてんか」で、主人公のてん(葵わかな)の夫、藤吉(松坂桃李)が、てんを笑わせようと放ったネタ。このように、「わろてんか」(笑ってください)と言われても、視聴者が思わず「笑えません」と返したくなるような、スベりまくるシーンが目立つ。

寄席のチェーン展開や漫才の普及拡大など、お笑い界で数々のエポックを成し遂げてきた吉本興業。NHKの朝ドラ「わろてんか」では、その創業の歴史を伝えているのだが…。(写真=アフロ)

 まだ見ていない人のために、まずはどんなドラマなのかの紹介から。主人公のてんは「吉本興業」の創業者、吉本せいさんがモチーフとされている。夫婦で小さな寄席を作ったところから出発し、後年、笑いの王国を築くことになった、別名「女今太閤」と呼ばれる人物だ。その立身出世伝は、山崎豊子の小説「花のれん」などを基に、何度も映画やドラマにもなっている。

 「花のれん」や、吉本せいさんについてのいくつかの評伝を読むと、まあ、吉本のお笑い界への功績たるや、そりゃもう並みじゃない。東京もんのせいか、大手芸能プロの一つだろうくらいに思っていたけど、実は全然違った。

 寄席をチェーン展開したのも吉本だし、芸人を月給制にして、人気芸人を多数抱えたのも吉本。そんな革新的なビジネス手法だけではない。古典的芸能の「萬歳」から発展した新しいスタイルのお笑いを、「漫才」と名付けて広めるなど、演芸の歴史にも大きく関わってきた。とにかく吉本がお笑い界で画したエポックは、数え切れないのだ。