前頭葉の萎縮は40代から

 二つ目は、脳の老化予防という観点である。

 人間の脳では記憶を司る海馬の老化よりずっと早い40代くらいから前頭葉の萎縮が目立ち始める。

 難しい本を読んでも通常は側頭葉しか刺激されず、難解な数学の問題やパズルに取り組んでも頭頂葉しか鍛えられないとされている。ただ、この側頭葉や頭頂葉の機能は高齢になっても意外に保たれ(だから年をとっても難しい本は読める)、ルーティンワークは知的専門職でも続けられるし、知能テストの点数は案外維持できる。認知症でも初期には、ほとんどこれらの機能が落ちないのだ。

 それに対して、前頭葉というのは、クリエーティブなことに取り組んだり、想定外のことに対応する際に用いられる。

 知識を詰め込むより、これまでに経験したことのないような体験をしたり、既存の知識を用いてクリエーティブなことをしたり、自分の考えをアウトプットして意外な反応を受けるなどした方がはるかに前頭葉の老化予防になるはずだ。

 三つ目は記憶への悪影響だ。

 現代の脳科学では、記憶は忘れるのでなく、書き込まれているが引き出せなくなっているという考え方が有力だ。だから、10年ぶりにある場所を訪ねてみて、行ったことのある場所を見ると、「あ、この店まだやっているんだ」と思い出す。これは忘れているのではなく、脳にその記憶が書き込まれているのに、その場に再び行くまで引き出すことができないために生じる現象と言っていいだろう。

 だとすると、余計な上書きをすればするほどかえって肝心なことが思い出せなくなることを意味する。これまでの書き込みが多いのだから、歳を取れば取るほど引き出す努力をした方が、使える(引き出せる)知識が増えることになる。

 ということで私は外山先生の意見を支持したい。要するに旧来型の勉強をすることでかえって脳に悪く、頭が悪くなってしまうのだ。