医者や学生が選ぶ病院ランキングに注目

 私にしても知らない科で身内が治療を受ける際には、元同級生に聞くことが多い。

 マスコミに答えてくれるかどうかは分からないが、同業者の評判はやはり彼らも耳にしているので、それなりに貴重な情報を教えてくれる。医者にアンケートをしてランキングをつける雑誌があったが、匿名なら本当のことを教えてくれるかもしれない(逆に匿名でないと、心臓外科の南淵明宏先生――天皇陛下の手術の前から、自分は天野先生にかかりたいと教えてくれた――のように、よほど腕に自信がある人でないと本音が言えないかもしれない)。

 そういう意味で公にされているデータで私がもっとも注目するのは、臨床研修のマッチングのランキングだ。

 毎年、医師臨床研修マッチング協議会というところが施設ごとの研修医の定員と、その病院への希望者数の結果を公表している。日経メディカルOnlineのような医師向けのサイトで、それをランキング化してくれているが、一般の人でも興味のある大学病院や大病院のデータは手に入るはずだ。

 臨床研修制度が必修化されてから、大学の医学部の卒業生は自由に研修先を選べるようになった。これによって東北地方の大学の医学部の学長は、東京から入ってきた学生が東京の病院で研修するようになって、東北地方に医療崩壊を引き起こしたと言明した。しかし実際は、その大学のある県は研修医がむしろ大幅に増え、その大学病院の研修医が集まらなかっただけだと判明した。

 今の医学生は将来の高齢化を見越して、むしろ地域医療を学びたがっていることが明らかになった。実際は、研修医が大幅に増えると予想された東京都の研修医が、人数の上では最も減っていたのだ。

 医学部の学生は、自分の大学の教授は臨床軽視で研究重視だとか、どこの大学の先生は手術がうまいといった理由で研修先を選ぶ。

 この臨床研修マッチングの中間報告が先ごろ発表された。私は最終報告より中間報告のほうをあてにしている。競争率が高いと第二、第三志望の病院に希望先を変える医学生がいると考えられるからだ。

 大学病院では、今年は1位希望人数が一番多かったのは東京医科歯科大学だった。ただ、定員が多いので充足率は85%にとどまる。東大は2位だが充足率は7割に満たない。東大で研修を受けたというブランドを求めての人もいるだろうから、この数字はやはり心もとない。それと比べて注目すべきは杏林大学だ。定員65名に希望者79人。私の学生時代は東大教授を退官した後の天下り先のような病院だったが、今は腕のいい医者を集めているのだろう。あえて名前は書かないが、研修医にソッポを向かれているような病院は要注意だ。東北地方の名門国立大学病院はなんと充足率11.1%だった。

 市中病院では、予想通り、聖路加国際病院や亀田総合病院の人気が高いが、驚くべきは武蔵野赤十字病院だ。10人の定員に52人が1位希望で充足率520%はダントツだ。希望者数も亀田総合病院よりも多い。少なくとも私が見るところ臨床力の高い病院が上位を占め、医学生もよく将来のことを考えていると安心した。

次ページ 実はあてになる患者の評価