世代別に見る老化対策、60代は受難

 ということで、いつからどのようなかたちで衰えが現れるのか示した人生の未来予測図のようなものが必要だと私は考えるようになった。何歳までどのように老いと闘い、いつから覚悟を決めて介護などの準備に入った方がいいかを判断できる指針となる。

 実際、老いとの闘いの重要ポイントは年代によって違っている。

 40代であれば、最大の敵は意欲低下(このために体や脳を使わなくなると老化が速くなる)であり、その元凶となるのが脳の前頭葉と言われる部分の萎縮と、男性の場合は男性ホルモンの減少だ。

 普段のルーティンとは異なる行動をとることが、前頭葉の老化予防に役立つ。なるべく毎日違う道を通るとか、違う店で食事をするとか、あるいは右寄りの思想を持つ人は左翼系の雑誌などを読み、逆に、左寄りの人は保守論壇の本を読むなどといったことだ。いつも同じような本を読んだり、同じような数学の問題に取り組んだりしている人は、いくら内容が難しくても、側頭葉や頭頂葉の働きはよくなるが、前頭葉にはあまり影響しない。

 ホルモンの分泌量を保つ方法は前述の通りで、コレステロールを目の敵にすべきでない。

 50代になると健康診断で異常値が出ることが増え、それに一喜一憂する人が増えるが、それが死亡率の増加につながるエビデンス(科学的根拠)を示す国内の大規模調査はほとんどない。がんは日本人の死因順位のトップではあるが、がん死亡率は1000人に3人程度だ。

 うつ病が増えるのは40代からだが、50代でも自殺も死因順位の3位くらいに入っているし、そのために長年続けてきた仕事が継続できなくなる人が多い。メンタルヘルスに気を使うとともに、前頭葉が衰えないうちに、定年後の対策をしておいた方がいい。

 60代は長寿社会の受難の時期だ。定年などで会社にいられなくなるし、子供も自立していなくなる時期だ。さらにいうと80代後半から要介護や認知症が急激に増えることを考えると親の介護ものしかかる。メンタルヘルスの維持とアンチエイジングに努めないと、その後の人生がかなりつらいものになる。

 70代は個人差がものすごく出る時期だ。前述の吉永小百合さんや現役の政治家、財界人のように大成功者もいる半面、60代までにうつや脳血管障害、あるいはアンチエイジングに取り組んでこなかったために、要介護状態になったり、すっかり老け込んだ感じになる人も多い。親は亡くなり介護が必要なくなる代わりに、周囲で頼りにできる人も少なくなる。実は70代前半までは認知症よりうつ病の方が多い。記憶力が衰えたり、着替えをしなくなっても認知症でなくうつ病を疑う姿勢も重要だ。

 80代は要介護や認知症が急激に増える。老いを受け入れるとか、よほどの幸運がないとそれがいずれは来るという覚悟や、介護保険の利用、高齢者住宅・施設への転居などの準備がないと本人や子供世帯に大きな負担となりかねない。

 90代は、ラッキーでない人以外は認知症や要介護が前提になるので、それを嘆くより受け入れることが必要だ。

 と、概略的ではあるが、傾向と対策を並べてみた。知っているようで知らないことが多いというのが普段、高齢者に接してみての印象だ。興味を持たれた方は、拙著『年代別 医学的に正しい生き方 人生の未来予測図』に目を通していただければ幸いだ。