たまたま学生時代に雑誌のライターの仕事をもらって編集者にボロクソに言われながら直してもらった(今のこの連載だって、相当、編集者に直しを食っている)たまものだし、長い間文筆業をしていると書き慣れも生まれてくる。

 現在は、ブログというものがあるので、面白い体験やものの考え方をしている人が肩書に頼らずにそれで生活をしているようだ。どうしても著書を出すというと、それなりの実績や肩書がないと難しいのだろうが、ブログの場合は、誰でも参入できる。

うつ病から人気ブロガーに

 実は、最近、うつ病ブロガーのほっしーさんという人が本を出版するにあたって解説を頼まれた。

 新卒3カ月で双極性障害を発症し、会社をやめることになった青年が、その闘病と回復から得られた経験をブログにしたところ、たちどころに人気ブログになり、それ(とそれにまつわる講演依頼)で生活ができるようになったとのことである。さらに、これまでいろいろと試してきたうつの対処法を一枚の表にまとめてマッピングしたところ、4万もの「いいね!」がついたから、それが出版につながったというのが編集者の話だった。

 自分の闘病体験だって、肩書に頼らない飯のタネになるのである。

 最近、スーパーボランティアの尾畠春夫さんが、行方不明の男児を発見して国民的なスターになったが、ボランティアを地道に続けていると日の目を見ることがあるという話は多くの人を勇気づけた。

 私は、実は、臨床心理の大学院の教員を長年続けているのだが、私の大学院の場合、場所が東京・青山(今年から赤坂に移転)にあるという立地条件のよさと、大学の学部はどこを出ていてもいい(一般的には大学は心理系の学部を卒業していることが要求される)こともあって、いろいろな社会人が入学してくる。卒業して、試験に受かれば臨床心理士の資格(今後は公認心理師の資格も)を得られることが大きいようだ。

 その中に、例年2~3人大企業を定年退職になった人が入ってくる。心の問題に昔から興味があったとか、部下のメンタルヘルスで苦労したとか動機は様々だが、その年でも資格試験に合格する人が普通のパターンだ。

 公認心理師という国家資格ができたので今後どうなるかわからないが、臨床心理士は国家資格でなかったこともあり、決して収入には恵まれる職業とは言えない。しかし、それなりの尊敬を受け、社会への貢献度も高く、また定年のない仕事と言える。

 現役時代より収入が減っても生活できる人にはよい職業かもしれない。

 こういう例を見ていると、昔より肩書に頼らない人生が実現しやすい時代になっている気がする。

 ただし、ほっしーさんも尾畠さんも、あるいは臨床心理の大学院に入った学生も、それぞれの分野でまじめに取り組んできたから実を結ぶのも確かだ。例えば、ほっしーさんはものすごくよくメンタルヘルスの治療や対処法について調べていて、著書のゲラをみると、医者の私にも役立つ患者目線の情報が網羅されていた。

 少なくとも、中高年以降になれば、肩書に頼らない人生の準備や情報収集を集めるのが、長寿社会のサバイバル術になると私は信じている。(=一部敬称略)