米国では女医が仕事しやすいように保育施設を設けている病院も多く、体力面の弱さをカバーするシステムもある。

 私が米国の精神病院に留学中に驚いたのは、患者さんが暴れたときだ。日本だと医師と看護師が総出で患者さんを抑えにかかるのだが、米国では屈強な「セキュリティ」と呼ばれるガードマンが代わりに抑え込んでくれる。医療スタッフが直接制圧するとその後、患者との関係性が悪くなるというのが理由だったが、体力に劣る女医や女性看護師も安心できる職場環境だと感心したことがある。

 西川氏が言うように、重たい患者を背負うのは女医には無理だとしても、医師が力仕事を担わなくても済む分業体制が、米国の病院では確立していた。

 女医が体力的に戦力にならないのなら、女子受験生を差別するのではなく、女医を戦力にするシステムを構築するべきであろう。女性の労働力を十分に生かせないようであれば、日本で医師不足は一層深刻になる。まさに日本人全体のサバイバルの問題と言える。

長時間労働の解消が急務

 さらに日本の場合、医師の労働時間が長く、体力的にきついことが、病院が女医を敬遠する要因になっているようだ。長時間労働は医師不足が原因である。

 8月26日付の日本経済新聞朝刊によると厚生労働省は医師に限定した残業規制を2024年度に導入する。一般の労働者に19年4月から順次適用する年720時間よりも上限を緩くする。一般労働者と同じ規制では医師不足で現場が混乱しかねないというのがその理由だ。医師が不足しているのなら、医師の供給を増やせばいいだけのはずだが、安倍政権は医学部の新設を制限している岩盤規制に切り込もうとしない。獣医学部に関する規制は安倍首相の鶴の一声で崩れたのとは対象的だ。

 残業を長い時間続けると体力や集中力が落ちる。医療ミスや、おざなりな診察を誘発するなど、患者のサバイバルに直結する問題である。ついでに言うと、現場の多くの医師が勉強をする時間が取れないことも、海外の最新の治療法がなかなか日本に導入されない遠因になっているはずだ。

 医師の供給量を国家が過度に管理する日本の特殊な政策にメスを入れれば、女医にとって働きにくい悪質な労働環境は改善され、医者不足も解消に向かうと思えてならない。