圧力にどう対処するか?

 さて、そうは言っても、上からの命令や無言の圧力に逆らえないということもあるだろう。

 少なくとも、自分の身を守ることは考えないといけない。

 例えば経理の不正やデータの改ざんなど、法に触れたり、発覚した際に、自分にも損害賠償のリスクがある命令の場合は、「これは部長の責任の下でなさるんですね?」と確認したり、あるいは命令をメモにとったり、録音したりするくらいのことは必要だろう。上司に分からないように録音する手もあるが、あえてレコーダーを見えるようにすることでプレッシャーをかける方法もある。

 そんなことをすればことを荒立ててしまうとか、上司に嫌われるというような場合は、逃げるという手もある。命じられたその日に、その改ざんなりをやらないまま帰ってしまって、翌日からは熱を出したとでも言って、数日休めば、誰かほかの人が押し付けられていることだろう。

 心理学者として、あるいは精神科医としてアドバイスしたいのは、命令に従わなかったとしても、最悪の事態はそう起こらないということだ。例えば不正行為を拒否した人をクビにするのは意外に困難だ。左遷など不当な仕打ちはあるかもしれないが、事態が発覚して刑事責任を取らされるよりよほどましという発想をしたほうがいい。内部告発も同様だ。

 人間の心理というものは、逃げ道がないと思うと、どんどん悲観的な認知パターンに陥ってしまう。ほかに働き口を比較的容易に見つけられる立場にあっても、組織内での出世しか道がないと思い込んでしまうと、相当不本意な形でも、上司の言いなりになってしまう。開業医の道を選べる医師でさえそうなのだから。

 その命令や圧力に従わなかった場合どうなるのかというシミュレーションをなるべく多くのパターンで考えるという習慣は重要だ。あるいは、その組織を辞めた場合の転職先や、これからでも取れる資格を探すなどして逃げ道を確保することも大事だ。

 不当な命令を拒否した場合に起こるリスクばかり考え、発覚した場合のリスクは考慮しないという思考パターンは間違っている。

 悪いことをして、刑務所に入るよりましと思えれば、いろいろな選択肢が見えてくるはずだ。それが今のように圧力に従って生じる悪事が発覚しやすい時代のサバイバル術と私は信じる。

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