1つの対策に頼らない

 また意外に1つの災害対策で事足れりと考えてしまう人が多い。

 東日本大震災から何年か経って、福島県いわき市で被害が大きかった海岸地域を訪ねたことがある。新たに造られた10メートルを超える防潮堤が続き、津波対策は万全のように見えた。

 しかし、防潮堤の内側の道をクルマで走っていて気になることがあった。内陸の高台に向かう道がほとんど見当たらないのだ。津波警報を受けて数少ない逃げ道にクルマが集中しかねない。渋滞にひっかかっているうちに、堤防を乗り越えてきた津波に飲み込まれてしまうという事態は現実に東日本大震災の際に起きている。立派な防潮堤だけ造って、内陸への逃げ道を十分に造らないという発想に危険を感じるのは私だけではないだろう。

 つい最近、最高級マンションのデベロッパーの方と偶然、話をする機会があった。世界の大都市の超高級マンションには核シェルターが標準で装備されているのに、日本の超高級マンションにはそれがないという話だった。

 最新鋭のミサイル防衛システムを導入しても、あるいは米国と軍事同盟を結んでいても、確実にミサイル攻撃を阻止できるわけでない。にもかかわらず、核シェルターを用意しないというのはなぜなのか。実際、日本の核シェルターの普及率は先進国で最低レベルだという。

 自然災害でも戦争でも、1つの対策だけで備えが完璧にはならないはずだ。1つのことだけに莫大な費用をかけるより、いくつもの対策を用意しておくほうが安全性は高まるのではないだろうか。

 もう一つ重要なポイントは、失敗から学ぶことだ。例えば最近、大阪を中心に起きた地震でブロック塀が倒壊し、小さな子の命が奪われた。同じ悲劇を繰り返さなためにも、全国のブロック塀をチェックするなど、教訓を生かさねばならない。

 今回の豪雨でも、インフラにどのような脆弱性があったのかや、どのような対策が取れたのかを分析しないと、同じ失敗を繰り返すことにならないだろうか?

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