西日本豪雨の死者が200人を超え、今なお行方不明者の救助活動が続く。膨大な数の避難者が不自由な生活を送る中で、心身のストレスは大変大きなものとなっていることだろう。私も心の治療を専門とする医師として、また西日本の出身者として非常に心を痛める事態となった。

西日本の各地で豪雨被害が出た(写真:ロイター/アフロ)

 将来の災害を少しでも減らすためにも、西日本豪雨を踏まえて私なりにサバイバル術を考えた。今回はそれを紹介させていただきたい。

災害が起こることを前提で物事を考える

 西日本豪雨をきっかけに、豪雨を想定した避難訓練を実施している自治体が少ないという事実が注目されるようになった。地震を想定した訓練に取り組む自治体が多いのとは対照的だ。また過去数十年間に建物の耐震性が飛躍的に向上したのと比べると、水害を防ぐ技術はあまり進歩していないように思える。

 前回は認知症を発症する前提で物事を考えるべきだという話をした。同様に豪雨被害に遭う前提で日ごろから避難訓練を実施し、水害に強い土木や建築技術の研究に一層力を入れるべきだろう。

 西日本豪雨では水道が水害に弱いことも露呈した。私も知らなかったが、上下水の施設の多くは河川の近くにある。このため豪雨によって浸水しやすく、断水の原因となる。実際に西日本の各地で「水害下での水不足」というパラドックスが起きている。河川が氾濫するという前提に立って水道施設を整備していれば、このようなことにはならなかっただろう。

 自然災害全般について言えることだが、直接的な被害より、その後に想定される二次的な被害の方が大きいことは珍しくない。例えば都市直下の大地震では、地震による揺れや建物の崩壊による死傷者よりも、火事で死傷する人の方が多いと予想される。ところが、以前は火災が発生しにくい「オール電化」の普及が進んでいたのに、東日本大震災後の節電ムードからその流れが止まっている印象だ。また電信柱などが意外に倒れやすいようだが、消防の妨げになる。なのに、電線の地中化がほかの先進国の大都市と比べて日本は遅れているという現状はなかなか改善しない。

 災害が起こる前提で物事を考える場合、直接的な災害に対する備えだけでなく、二次被害への備えも忘れてはならない。